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ベレンは今月で完全撤退=JICAブラジル新旧事務所長に聞く=移住現場知らぬ世代へ

3月25日(金)

 JICAブラジル事務所(ブラジリア)で人事交替があり、同事務所としては初めて〃移住畑〃以降の世代、中近東・アフリカなどを主に担当してきた小林正博さん(51、山梨県出身)が十一日、新所長として着任した。小林所長と共に、二十三日来社した小松雹玄前所長(58)によれば、半世紀の歴史を持つパラー州都ベレン市の同オフィスも今月いっぱいで完全閉鎖される。一昨年十月に独立法人化する中、ステータス問題が再浮上したことなどに関連し、噂されるサンパウロ支所閉鎖問題などについて聞いてみた。w

 「僕も驚きました」とは、ブラジル事務所長への任命を聞いた時に、小林さんが抱いた最初の感想だ。
 それまでは、スリランカ、北米、パプアニューギニアなどへの二~三年間の長期赴任はあったが、南米へはエクアドル、コロンビア、ブラジルに数カ月の短期出張があった程度。今回が初の長期赴任となる。
 小林所長は「一度生活してみたいとは以前から思っていました。それまでは主にアフリカ、中近東だったので」と語った。
 あと二年で定年を迎える小松前所長ぐらいが、移住事業の現場を経験した最後の世代となるらしい。二十四日に帰国する。
 小林所長は「今まで赴任した国には日系社会はほとんどなかった。着任以来、日系社会関係者にお会いしているが、みな立派な方。感銘を受けることが多い。これから深くつきあっていきたいので指導していただきたい」と抱負を述べた。
 また、日本海外移住協会連合会(海協連)の時代、一九五六年に開設されたJAMIC事務所から数えれば半世紀の歴史を誇るベレン市のオフィスが今月いっぱいでその幕を閉じる。
 昨年四月に通常の支所から、環境問題に特化した「アマゾン環境プログラムオフィス」に組織変更したばかりだった。ところが、ステータス問題から日本からの人員派遣が困難となり、現地職員も退職したことから維持が困難となり、業務はブラジリアが直接管轄することになった。
 現地の日系社会では残念がる声も多いと聞くがとの質問に、小松前所長は「十分ご理解いただいているはずです」と語った。「もしアマゾン関係のプロジェクトが今後たくさん出てくれば復活することもありえる」とし、現状としては休止ではなく完全閉鎖であることを明言した。
 ステータス問題とは、JICAの連邦政府への登録が単独では認められず、正式には「総領事館別室」になっていること。
 独立行政法人に移行したため、日本国内法の観点から、他組織である外務省の別室として登録している現状に違和感が増しており、日本からの職員派遣に支障をきたしている。所長に関しては各国一人の「PERITO」(特別調査員)枠が確保されているが、職員レベルではビザ発給が困難となっている。
 噂されるサンパウロ市支所の縮小や閉鎖に関して、小松前所長は「サンパウロ撤退ということはない」と言明。「予算が少なくなることはあってもゼロになることはない。合理化はあるし、人を補充できないなどの問題もある」と縮小に関しては否定しなかった。
 最後に小林所長は「百周年に向けて単に祭典としてでなく、新しい時代の日系社会のあり方に関して、みなさんと議論をしてしっかり取組んでいきたい」と語った。
 小松前所長も「百年祭の全体像が見えないまま、箱モノばかりを議論するのはよくない。箱モノはあってもいいが、全体の中で一体どこに位置付けられるのか。そのようなことを討論する場を作る必要があるのでは」と提案した。

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