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コラム 樹海

 ブエノスは「南米のパリ」と呼ばれタンゴとダンスに明け暮れる素晴らしい栄華を誇った。あの広大なパンパの緑豊かな草ですくすくと育つ畜牛の輸出がアルゼンチンを大金持ちにしたのだが近ごろはさっぱり元気がない。どころか―日本やアメリカなどから借りたお金を返すことも苦しくなり「30%は払うけれども残りの70%は棒引きにして呉れ」の勇ましすぎる要求である▼あの国は伝統的に日本とは親しい。もう古い話になるが昨年―94歳で物故した内山勝男・サンパウロ新聞編集主幹に教わったのに「アルゼンチンは親日的で日露戦争が始まる直前に「日進」と「春日」の巡洋艦を日本に譲ってくれ、この2隻が日本海海戦争で大活躍した」という。明治の頃、あのタンゴの国は、一人当たりの国民所得がドイツやイタリアとほぼ同じ位であり「豊かな国」とも聞いた▼ところが、今や牛肉の輸出もトップの座をブラジルに奪われ工業なども特に見るべきものはあまりない。そんなこんなで国債を発行し外国で売り捌いたはいいが、元本はおろか利子さえもが支払えない。このアルゼンチン国債に日本の投資家や金満家らは飛びついたらしい。金額にして約2000億円も買ったのだが、返ってきたのは「元本の3割は返済します」である。まさか国が破産?するとは誰もが思ってもみなかったらしい▼まあ、これはタンゴの国がおかしい。「借りたものは返す」は鉄則であり、これがいとも簡単に破られると国と国との商行為も危なっかしくなり、無法が横行してしまう。タンゴは情熱的で華麗でいいのだけれども、ほどほどに―である。 (遯)

05/4/7

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