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日本にいるほど肥満傾向=デカセギの生活調査=中間発表「健康教育が必要」

4月21日(木)

 「訪日就労者への健康知識の教育が必要です」。日本の文部科学省の国費留学制度を使い、筑波大学大学院で研究しているアンジアラ・シュウインゲルさんは現在、日本の日本人、サンパウロの日系人、日本のデカセギの健康状態を比較する調査を行っている。
 十五日午後五時からブラジル日本文化協会会議室で行われた中間発表では、いろいろな興味深いデータが発表された。日系研究者協会(SBPN)と文化教育連帯協会(ISEC)の共催。
 昨年九~十一月に群馬県大泉町、埼玉県上里町、岐阜県美濃加茂市の三カ所で、三百三十四人の日系ブラジル人(三十五~七十歳)を対象にして第一次調査が行われた。うち二百十四人と大半が二世だった。
 それによれば、五六%はブラジルに戻りたいと考えており、「日本では厚生年金に入っていないために、老後の問題がある。ルーラ大統領訪日でも年金通算協定について話し合われると聞いています」という。
 三六%は大学に入学した経験があり、約七〇%は工場や建設現場で働き、五六%が二十~四十万円を得ている。五三%がポルトガル語だけで生活をしており、日本人との接触の少ない住み分け状態にある。
 「日本人の医師を信用しておらず、ブラジルの医薬品をブラジル人商店で買い、勝手に対処している人がいるのが問題。法律が厳しいので、外国人医師は日本では非常に少ない」。
 興味深いのは、「日本にいるほど太る傾向にある」という点だ。「特に五年以上滞在している人にその傾向が顕著」と指摘する。六〇%は高コレステロール。二〇%が高血圧に悩み、その半分が薬を服用している。「きちんとした処方に基づいて服用しているのか、疑問は多い」。
 大半のデカセギ労働者は工場の昼ご飯で、ブラジル食弁当を週に三回以上食べており、「日本にいても魚を食べないし、お茶も飲まない。ブラジルと同じ食生活をしている」と肥満の原因を分析する。
 「最大の解決法は、栄養や健康知識の教育しかない。その他、ブラジル食レストランやブラジル食弁当のカロリーを下げるように働きかけることも有効では」と提案する。
 男性の六〇%が現在喫煙しているか、過去吸っていた人で、女性は二〇%。
 七八%が「特に運動をしていない」状態。「週六日間、一日十時間以上労働し、体にも心にも疲労がたまっている」という。
 工場では毎朝、ラジオ体操をするところも多いが、「ブラジル人の多くはヒジクロ(滑稽)だと感じてやらないんです」との現状を説明した。
 中川デシオ医師は「日本式の動きを主体としたラジオ体操に代わるブラジル式体操、例えばアシェの動きを取り入れたものなどを開発するのも一つの手段では」と意見を述べた。
 第二次調査として四月現在、サンパウロ市の日系人を調べている。シュウインゲルさんは同大学院博士課程でスポーツ医学を専攻しており、この調査が終わるまでにあと一年かかる。

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