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セラードの生態系を守れ=―JICA協力、動物の移動経路確保―=連載(6)=活動統合センター立ち上げ=これで公園が守れる

5月25日(水)

 「すべての者は民衆の共同財産として、自然環境保持の権利を有す」(ブラジル共和国憲法、荒木進訳)。民主化後初めて制定された、ブラジルの八八年憲法。第二百二十五条で、環境権が明記された。自然を守るための法的根拠が存在しているというのは、注目に値する。
 八〇年代末まで、開発優先の対象とみなされたセラード。大きな転機になったのは、リオ・サミット(九二年)だ。ブラジルでは八一年に、環境基本法が成立。八九年にIBAMA、九〇年に環境省が発足した。さらに、環境犯罪法が九八年に定められるなど法整備が進んだ。
 シャパーダ・ドス・ヴェアデイロス国立公園で九〇年代初め、NGO団体により、クリスタル採掘人を研修させてガイドに変えるという試みも行われた。現地の地理に詳しいガリンペイロの知恵を、環境保全に役立てようという考えからだ。
 城殿博さん(長期専門家、チーフ・アドバイザー)は「比較的古くから、自然を生かした観光が展開されています。持続可能な開発という概念も周辺の行政機関やNGOの活動を通じて、浸透しているようだ」と話す。
 ブラジルの受け入れ態勢に対して、JICAブラジル事務所(小林正博所長)に懸念がないわけではない。「財政難で関係省庁の予算が不足、職員の能力にも限界がある」。最も恐れるのは、政権交代による行政の断絶だろう。
 実際、セラード生態コリドー保全計画で当初、六つの成果が設定された。プロジェクトが〇三年二月にスタートする直前に、PSDB(ブラジル社会民主党)からPT(労働者党)に政権が変わった。
 業務の引継ぎが順調にいかず、仕事が軌道に乗るまでかなりの時間を要した。そのため、成果を三つに圧縮せざるを得なかった。
 城殿さんは「何もかもリセットされた状態から始まりました。最初の一年はなかなか、IBAMAとの歩調が揃わなかった」と表情を曇らせた。残された活動期間は、あと八カ月。JICAが去った後も、生態コリドー保全計画を継続させるための仕組みをつくりあげなければならない。
 〃インテグラソン(統合)〃。プロジェクトが掲げた、大きなキーワードだ。JICAの支援が結実。環境活動統合センター(CIAA)がこのほど、公園内のビジター・センターに立ち上げられた。
 行政機関やNGOが持つ経験を活用。それまでバラバラに展開してきた活動を、一元化していくのが狙い。「公園関係者だけでなく、地域住民が参加。必要な情報を共有する場になりつつある」(城殿さん)。
 内規を整えて法人化し、IBAMAから公園管理を任されるような体制にもっていきたいところ。福代孝良さん(29、短期専門家)は「人事異動などでIBAMAに問題が起きても、CIAAさえしっかりしていれば、公園を守っていける」と力を込める。
 法人格を取得すれば資金の受け皿にもなり、支援団体に宛てた要請書の書き方なども訓練中だ。
 七日午後のセミナーで、国立公園とその周辺五キロを収めた地図の一部が披露された。GIS技術(地理情報システム)を駆使して作成しているもの。三次元空間が映し出され、出席者の目を釘付けにした。
 これまで、紙の地図上に必要な情報を書き込んでいく方式が主流だった。浅野剛史さん(33、長期専門家)は「すごい進歩です。ブラジル、いや南米一の代物でしょう」と胸を張る。
 新しい生態コリドーの場所を提言することなどが可能だ。「道路建設などにも活用すべき」「公園づくりに利用したい」…。会場から大きな反響が起こった。
 ただ、GIS技術を使いこなせる人材が現地に不足している。プロジェクトが終了した後、どうなるのかと問いかけが出た。出席者の一人が、すぐに答えた。「研修をして、使い方を教えてください」。
 福代さんが満面に笑みを浮かべて言った。「これが、インテグラソン(統合)につながるんです」。
(つづく、古杉征己記者)

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