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弓場の農場生活を満喫=ダンスを通し交流=社会福祉の一環で恵まれない子供ら

2005年7月26日(火)

 サンパウロのスタジウム・バレエ団(マリカ・ジダーリ代表)が主催し、聖市内貧困地域の公立学校生徒を対象にダンスを通して協力性や衛生を学ばせる「プロジェクト・ジョアニーニャ」の生徒ら約四十人が二十二日、ミランドーポリス市にあるコムニダーデ・ユバ(弓場農場)を訪れ、二十四日までの三日間、作品発表や農作業、ワークショップなどの文化交流を行い、参加した十歳から二十歳までの生徒たちは普段味わうことのない大自然での生活を満喫、ヤマ(弓場)の子と感動の体験を共にした。
 この文化交流企画は、農場出身で現在聖市内でダンス講師を務める小原あやさんがジョアニーニャの思想に共感し提案したもの。歓迎会などはヤマの子たちが主体的に計画・実行した。
 初日は農場内見学、農場体験、絵画、弓場バレエの公演と歓迎会。二日目は農作業手伝いとジョアニーニャの公演。三日目はそれぞれのワークショップとお別れ会を行った。自由時間にはサッカーやバレーボールで一緒に遊び、アクロバットの技を教えあうなどして、まるで以前からの友達のように仲良くなった。両方の子供たちは、ブラジルと日本の生活が混ざる中で、貴重な時間を過ごした。
 「コレイーイ?」。ゴヤバが収穫頃かどうかを、覚えたての日本語で、ヤマの子に尋ねるジョアニーニャの生徒。食べ方も教えてもらい満面の笑みで「おいしい!」。少々硬めでも彼らにとっては特別の味だ。普段サンパウロに住む都会っ子は、鶏を絞めて裁く作業やゴヤバの収穫などの農作業に大興奮で参加した。
 初日夜には弓場バレエによる歓迎の舞台の幕が上げられ、ヨサコイ・ソーランや、移民をテーマにした『輝かしき開拓者』、フェスタ・ジュニーナを題材にした『フェスタ・ジ・インテリオール』などを披露すると、ジョアニーニャの子供たちは一曲一曲に盛大な拍手と歓声を上げて大喜び。普段農業をしている老人から幼い子供までの熱演に、舞台を見つめる目線はきらきら輝いていた。
 同プロジェクトで五年間ダンスを学んでいるクラウジオ・リラさん(14)は「フェスタ・ジュニーナのダンスがすごくよかった。見ていてとても楽しくなり踊りたくなった」と興奮した様子。
 農場での生活については「もっと日系の人はまじめで仲良くなれないかと思っていたけれど、みんな気楽に話せるし、オープンな雰囲気があって仲がよいのも伝わってくる。自然もいっぱいですごく楽しい」とにっこり笑った。
 また、その後の歓迎会では農場の歴史や思想をヤマの子どもたちが紙芝居風に紹介。同農場の矢崎正勝さんは「このためにここの子供も弓場のことを調べた。誰かに紹介することによってそれを自分たちのものにすることができてよかった」と感慨深げに話した。
 ジョアニーニャの公演は二十三日の夜、弓場の舞台で行われた。ミランドーポリス各地から集まった来場者は五百人におよび、農場で用意した屋台やおみやげ屋も賑わった。
 公演は全員がジョアニーニャ(テントウムシ)をイメージした衣装を身に着け、ブラジルの多彩な文化や自然の脅威、人間の文明や盛衰を表現したスペクタクルを繰り広げ、高い技術や表情の豊かさに観客は魅了された。中でもメンバー全員で子供の権利や教育の大切さを訴える長い詩を暗誦するパートでは、彼らそれぞれの決して楽ではない背景が伝えられ、真剣な眼差しを前に涙を堪えきれぬ姿もあった。
 弓場出身で今年三月から聖市で受験勉強をしている矢崎夏さん(18、3世)は「彼らの練習や舞台を見て見習わないと、と思った。本当にバレエが好きな気持ちが伝わってきてエネルギーをもらった」と話し、今回の交流について「久しぶりに帰ってきてこんなにたくさんの人がいると後で余計に寂しくなりそう。農場を案内するとき話を聞いてくれるか心配だったけれど、実際は真剣に聞いてくれ、楽しんでいるのが伝わって本当に嬉しかった」と喜びを語った。
 ワークショップでは、互いの準備体操やダンスを教えあった。弓場バレエの振付師、小原明子さんは弓場で踊りが取り入れられた歴史を説明し、「踊ることは体で話をすること。畑に種をまいて育てるのと同じく自分たちの人生を豊かにする。体をほぐし心を解放するのは翌日の仕事に大切。みんなで力を合わせて踊ることはそのままコミュニティを育てることにつながる」と意義を語った。
 さらに、ヨサコイ・ソーランの中から日本の古い走り方や座り方の取り入れられたパートを例にとって日本と西洋の舞踊の違いを話し、実際に全員が挑戦。普段の動きとは違う動作に戸惑いつつも、器用さや運動神経のよさを発揮して忍者のような走り方を会得する生徒もあった。
 三日間の文化交流を通して発起人の小原あやさんは「これからもこういった機会を持ちたい。こんなにうまくいくとは思わなかった。これは子どもたちの力」と話した。
 スタジウム・バレエ団の代表マリカさんも「感謝してもしきれない、得たものは計り知れない」と感激した様子だった。
 最終日の夜、お別れ会で弓場の弦楽器演奏に思わず泣くジョアニーニャの生徒もおり、都会っ子たちはかけがえのない文化交流を体験したようだ。

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