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日伯文化の融合=クーニャでこそ=「日本文化友の会」=陶芸30周年講演会=シドラエスさん語る=「居心地悪い21世紀の地球=違う世界、陶芸に表したい」

2005年8月10日(水)

 陶芸の町クーニャ市に住む陶芸家が集まり結成された同市日本文化友の会は、去る七月二十九日午後二時から四時まで「陶芸三十周年記念講演会」(同市役所、観光局後援)を、国際交流基金日本文化センターで行った。講演者は日本語が流暢なポルトガル人のアルベルト・シドラエスさん(60)。「クーニャで生み出される(私の)作品は日伯両国文化が融合したもの」と述べた。聴講した人々は興味深そうに話に聞入っていた。
 「日本で陶芸を学んだけど、ブラジルに来てその環境に入って、日本とブラジルの文化を融合した作品ができる。それがクーニャの文化」。アルベルトさんの作品は人間の頭、顔が中心だ。「頭は人間の一番大切な部分。その時感じたものを作品にしている」と話す。
 アルベルトさんは、一九七〇年、日本政府国費留学生第一期生として三年間福岡県九州大学で建築学を専攻。その当時訪れた窯元で陶器に出会い、魅了された。その頃、母国は治安が悪化していたため、帰国せずにブラジルに渡り、一九七五年、登り窯がついたアトリエを設立した。一九九〇年には再度、研究員として渡日。金沢工業美術大学でデザイン学、ヒューマニズム論を教えていた。
 自身を紹介した後はスライドを使用して同市で最初に作成した登り窯の様子や、一九七六年の第一回窯開き、当時の陶芸家たちの様子を紹介。「お互いのアイデアをぶつけ合うから仲良くなかったね」と説明しながら苦笑する。
 続いて、現在同市に在住している陶芸家たちの作品や、窯の様子を一人ずつまとめたDVDを放映。湯呑みや、皿、壺などだけではなく、オブジェ、人形など陶芸家らの個性ある作品の数々に参加者は真剣に見入っていた。
 最後は参加者のための質問時間が設けられ、次々に質問が飛び交った。アルベルトさんの作品の中には笛などの楽器もあり、グループを作って演奏会もしているそう。「あなたの作品はどのような人が買うのか」の質問には「きちがいが買う。食器などは他の陶芸家が作るから私が作る必要はない」と笑う。
 これからの目標については「その時の状況による。もっと自由になりたい。死ぬ時は百パーセントきちがいの状態で死にたい」と明るく話し「今の生きている社会に満足していない。二十一世紀の地球は居心地が悪いから、違う世界を作りたい。それを陶芸に表したい」と抱負を語った。
 また、同市では七月十六日から九月十一日まで「陶芸三十周年展示会」が開催されている。

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