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「日本語に飢えているお年寄りのために」=寄贈活動も

2005年8月13日(土)

 「祖国を恋しがり、日本語に飢えている移民の方に日本語を届けたい」。フリーアナウンサーで、国際協力機構(JICA)に勤める向井ひろこさん(兵庫県芦屋市出身)は、兵庫県南米交流団に自費で加わり三日に来伯した。十五日まで老人ホームを中心に絵本の読み語りをする。
 JICA大阪国際センターで日系研修員の受け入れを担当していた時、ブラジル日系人の女の子と知り合った。「私のおばあちゃんは、亡くなる前には日本語しか話さなくなっていた」と聞き、「高齢になるほど日本を思う気持ちが強くなるんだ」と感銘を受けたそう。そこで今年から始めた絵本の読み語りをしようとクリチーバ兵庫県人会会長の山下亮さんに連絡。渡伯することが決まった。
 四日に訪れた特別養護老人施設あけぼのホームでは、当初三十分の講演の予定が一時間になり、皆が涙を流すほど好評だったと言う。「老人は集中力がないって聞いていたけど、みんな真剣に聞いてくれてびっくりした。絵本を読むと皆の顔がいきいきしてきて感動した」と振り返る。
 ブラジル日本語センターでは「楽しく日本語を覚えてもらおう」と、同センター役員と「にゃーご」(宮西達也著)という絵本をもとに劇を披露。子どもたちにとても喜んでもらえたと言う。また、アナウンサーであり、日本語教師二級を取得している向井さんは、日本語教師に向けて、どのようにしたら日本語が綺麗に聞こえるか、などの指導した。
 その他、憩の園、クリチーバそうじゅう会老人クラブを訪問。「老人ホームを周ってみて、やはり日本語が必要なんだということを肌で感じた。痴呆になりかけている方でも頷きながら聞いていた」と感想を話した。
 また、七日に行われたブラジル兵庫県人会創立四十五周年記念式典、ブラジル日系老人クラブ連合会三十周年でも披露した。
 今回、日本から「リトル・ブッタ」(絵、文・葉祥明)、戦後六十年にちなみ特攻隊員と子どもたちの交流を描いた「すみれ島」(文・今西祐行、絵・松永禎郎)、童謡写真集「『こころのうた』の風景」(毎日新聞大阪本社写真部編、アスク刊)など絵本約三十冊を持参。これらはブラジル日本語センター、クリチーバ兵庫県人会にそれぞれ寄贈した。
 向井さんは「日本人が日本語を大切にしないと誰も大切にしてくれない」と話し、「ブラジルでの日本語は外国語としての日本語。いかに興味を持ってもらえるかを考えていきたい」と抱負を語った。

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