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昭和がよみがえった1日=「日本人の心の歌ショー」満員御礼=文協大講堂=埋めた1300人=感動の渦に包まれる

2005年8月23日(火)

 本紙読者が投票で選んだ不滅の名曲五十五曲をコロニア歌手が歌う「日本人の心の歌 チャリティーショー」(道康二実行委員長)が二十一日、ブラジル日本文化協会の大講堂で行われた。これで五回目。回を重ねるごとに関心が高まり、投票数は昨年の三倍。読者の熱い期待に応えた終戦六十周年記念の節目のショーは大成功を収めた。
 「歌っていて涙があふれそうでした。こんなに温かい会場はありません」と、興奮覚めやらぬ様子で、文協大講堂から出てきた高橋ゆみさん。『ここに幸あり』を熱唱し、会場を埋め尽くした約千三百人の声援や拍手に感激した。
 観客の田中美智子さんは「日本ではこんなにまとめていい歌ばかり聴く機会はないですね」。満足そうに感想を話した。
 誰もが感動、興奮して聴き入った昭和の思い出の歌――。
 「会場は超満員です。どうぞ席を譲り合って少しでも多くの方が座れるようにお願いします」
 開演直後。司会がそう呼びかけるほど席は埋まっていた。開場時間を早め八時半にドアを開けたときには五十人以上の人が並んでいたという。
 受付の山根節子さんは「ひっきりないしにお客さんが来ます」。忙しそうにしながらも笑顔で来場者に応対していた。
 中にはミナス・ジェライスやパラナ州、遠くはセアラ州からショーのためだけにやってきたという人もあったという。
 ショーでは、ニッケイ新聞の読者投票によって選ばれた五十五曲が歌われた。戦前・戦後の部に分けられ、九歳から七十九歳までの五十二人のコロニア歌手が熱唱。それぞれ全伯やサンパウロ州のカラオケ大会で優勝経験のある歌唱力の持ち主である。
 『月の砂漠』を歌った西谷エジナさんは「今までちゃんと歌ったことのない歌でしたが、道さんにぴったりだからと言われて挑戦しました。舞台で歌っていたら本当に自分が砂漠を歩いているような気分になって涙をこらえるのに必死でした」と白いレースの衣装を身にまとって話した。
 演奏を担当した楽団ザ・フレンズの指揮者、広瀬秀雄さんは「今回はかなりよかった。少ない練習の中でよくやったと思う」と成功を祝った。
 「コロニアにはこんなにいい歌手がいるのか。日本語が話せなくても歌うと上手いね」。来場した男性は感嘆の声をあげていた。
 五十五曲の中には昨年も選曲されたものが目立った。「もっと新しい別の曲も入れてほしい」という声も聞かれたが、道実行委員長は「一位と二位の『荒城の月』、『川の流れのように』は七十票もみなさんからのリクエストがあった。昨年と重なってしまっても、みなさんが聴きたいと思っている以上、希望に応えないといけません」。
 今回、実行委員長が独自に入れた曲は、田辺ファビアさんが歌った美空ひばりの『一本の鉛筆』。「戦後六十周年の記念なので、美空ひばりが歌った唯一の反戦の歌を入れました」とその理由を語る。
 「曲の説明を一言司会が加えることで、聞く人にも歌う人にもその曲に対する思いが深くなる。特に昭和は戦争の時代だった。思い出す曲一つ一つが戦争の記憶を蘇らせる。このショーはただ懐かしんで歌謡曲を聴いたり歌ったりするのではなく、戦争のことを忘れないで世界平和を願うためのものです」
 開催は今年で五回目。チャリティーで行っているためスポンサーがないと運営できないが、「来年もやりたいです、みなさんが楽しみにしてくれていますからね」。
 来場者の協力券とDVD、ビデオ販売による純益は、援協を含めた福祉団体に寄付される。
 ショーのDVDとビデオはそれぞれ八十レアルで販売。詳細はニッケイ新聞11・3208・3977(ヘジーナ)まで。

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