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サンパウロ市日系一家5人殺害=犯行楽しんだ形跡も

2005年9月14日(水)

 暴行を加えている最中、犯人はタバコを吸い、ビールを飲んで、家に電話する余裕もあった――。
 肉親五人が惨殺された事件で負傷し気絶しながらも一命を取り留めたヨネクラ・ウィリアム・ジュンさん(29)の、断片的な記憶から浮かび上がる悲劇の模様は凄惨を極める。長時間にわたった虐待、銃や凶器で奪った五人の命、死体と家屋に放火……。その非人道的な残虐行為には言葉を失うが、伝えられる犯人の男二人の様子からは犯行を楽しんでいた形跡さえうかがえる。
 複数の伯字紙の伝えるところによると、十日午後八時ごろだった。当日の朝、出稼ぎ先の日本から一時帰国したウィリアムさんがすでに布団に入っていたところを、犯人二人は襲った。家族がいる居間に連れて行くよう要求し、ウィリアムさんら五人をひもで縛りつけた。
 その後、弟のニウトンさんが帰宅。やはり手足の自由を奪われ、ドルを出すよう命じられた。六年間の出稼ぎなどで稼いだお金の大半二万七千ドルは銀行に預金され、自宅にあった五千ドルしか渡せなかった。
 受け取った犯人は「もっとあるはずだ」と、時間をかけて室内を物色。その途中、ビールを飲んだり、家で待っている妻に電話し、「心配ない」と状況を報告するゆとりさえあった。
 タバコの火は、ニウトンさんの手に押し付けて消した。家族全員の顔にはTシャツがかぶせられていたが、父のサダシさんが犯人の声に聞き覚えがあるというと、暴行は一層強まった。木の棒で次々と頭部を狙って打撃し始め、ひとり、またひとりと失神、ウィリアムさんも抗えず気絶した。犯人は父母を二階に連れて行った。乾いた銃声が響いた。
 息を引き取ったと見るや、シンナーとアルコールを五人の体に撒いて着火、警察が駆けつけたときには三人が焦げた姿で発見されている。犯人は気絶していたウィリアムさんも死んでいるものと思い、燃やそうと試みたがシンナーがちょうど切れ、マッチの火がつかなかったのが幸いし、生き残った。
 ウィリアムさんが最後まで気がかりだった、日本生まれのブルーノ君(11カ月)は、頭を撃たれた妻のエリカ・アケミ・ミヤモトさん(28)のひざ上で血まみれになっているところを、隣家の住人によって救助され、無傷だった――。

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