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世界選手権で初の金=元メダリスト=石井さん語る=「有望株多いブラジル」=柔道

2005年9月21日(水)

 先ほど行なわれた柔道の世界選手権(八~十一日、エジプト・カイロ)男子六十六キロ決勝。アテネ五輪との二冠を狙った日本の内柴正人を相手に一本勝ちしたブラジルのジョアン・デルリ・ヌネス・ジュニオール。「ブラジルはオリンピックでは二個の金メダルを獲っているが、世界選手権では初めてだった」
 その快挙を称えるミュンヘン五輪メダリストの石井千秋さん=サンパウロ市=にジュニオールの経歴や、ブラジル柔道界の近況について聞いた。
 二〇〇〇年の世界ジュニア選手権で優勝し一躍名をあげたジュニオールは当時六十キロ級の選手。
 だが、二〇〇二年の南米大会でドーピング検査に引っかかり六カ月間の大会出場禁止処分、翌年の南米大会では減量に失敗し敗退という挫折を味わった。
 以後六十六キロ級に転向するものの、「このクラスはアトランタ五輪銅メダリストのエンリッケ・ギマラネスが覇者で、身長百六十四センチのチビのジュニオールは長身のエンリッケに歯が立たなかった」
 二〇〇三年の世界選手権(大阪)、翌年のアテネ五輪は予選会で惜敗する苦杯をなめたが、今年はエンリッケが引退し、代表の座を獲得。パンアメリカンとトルコ国際で連続優勝を果たした勢いに乗って、今回の世界選手権を迎えた。
 一九八一年リオ・グランデ・ド・スル州ポルト・アレグレ生まれの二十四歳。少年時代から怪力で知られ、地元アントニオ・カルロス・ペレイラの道場で柔道の基礎を学んだ。
 来年の世界選手権はリオデジャネイロで開催され、二〇〇八年北京五輪の出場枠が争われるが、ジュニオールには選手権二連覇と五輪での金メダルという大きな期待が掛かる。
 といっても、実力実績ともに申し分ない有望株は彼のほかにも多い。
 今選手権軽量級で三位に入ったルシアーノ、アテネ五輪銀のレアンドロ(七十三キロ級)、さらに、共にシドニー五輪銀のチアゴ(八十一キロ級)とカルロス(九十キロ級)……。
 石井さんが個人的に特に注目しているという無差別級のジョアン・ガブリエルもいる。身長は二メートルを超え、「ヘーシングの再来を思わせる、二十歳になったばかりの若者」だ。
 そうした有望選手が次々と育っているブラジル柔道界のさらなるレベルアップを促しそうなのが、最近サンパウロ市のイビラプエラ体育館に出来た三百畳の練習場の存在。
 全伯講道館有段者会の申請を受け、日本政府から供出された草の根無償資金で完成したもので、オランダ、ベルギー、ドイツなど欧州の強豪国から代表チームが強化合宿に訪れるようになった。
 世界の一流選手と対戦する機会が増えたことで、ブラジル選手の実力の底上げに繋がっている。
 「ナショナルチームの篠原ルイス監督は(ソウル五輪金メダリスト)アウレリオ・ミゲールを育て上げ、いまも選手を引っ張っている。これからのブラジル柔道に期待してください」と話した。

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