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コラム 樹海

 「ブラジル移民がどれだけ苦労したかよく分かった。泣けただよ」。先日『ハルとナツ』を見た父から珍しく国際電話があった。毎晩楽しみに見たという。息子が住んでいるという一点以外に、かつて南米に関心を持ったことのない人だった▼当地でもいろいろ意見を聞いてみたが、驚くほど「私も同じような経験をしました」との声が多かった。このドラマが日伯両国の日本人に与えた影響は大きいだろう。百年祭を目前に、ブラジル移民の歴史が日本で認知されたことは、まず喜ぶべきことだ▼ただし、サンパウロ市在住の映像記録作家、岡村淳さんが盗作疑惑を持ちだしていることは、本紙既報の通り。参考までにその作品を見た。実に良質な移民密着型のルポであり、その真摯な取材態度には頭が下がる。だが、くだんの「盗作」うんぬんに関していえば、正直な個人的かつ主観的感想をいえば「別物」だと思った。もちろん、岡村さんには疑惑を主張する権利がある。NHKと岡村さんの間でじっくり話し合われるべき問題だろう▼同時に、疑惑があるからといって、前述した『ハルとナツ』にケチがつくとか、意義がなくなるという話ではない。まったく別次元に扱われるべき問題だと思う。現在全伯で上映会が行われている『アマゾンの読経』を見れば分かるように、岡村さんは移民を取材するために自ら移住したという類い稀なスタンスをもった作家だ。なんとか、良い形で決着がつくことを期待したい。 (深)

05/10/21

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