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社会から暴力をなくそう=NGO=Escreve Beleza Brasil=銃犯罪で弟を失った=チバナさん=情熱をかけ取り組む

2005年10月27日(木)

 社会から暴力を無くしたい──。NGO団体「エスクレーヴェ・ベレーザ」がサンパウロ市内の州立校五校とがん病院を巡回。高校生に写真撮影やドキュメンタリーの制作をさせながら、社会生活を送るための知恵を授けている。創立者の一人で同団体の代表は、沖縄系三世のチバナ・ロザナさん(40、歯科医)だ。八年ほど前に自宅で、弟が強盗に射殺された経験をから、教育を改善することで安全な社会をつくろうとNGOの発会を思い立つ。診療所そっちのけで熱心に取り組む彼女に、活動の現状をきいてみた。
 十月半ばの午後に同NGO団体一行は、サンパウロ市東部エミリオ・マタラーゾ区のレオノル・レンデシ校を訪れた。同校では十五歳から十八歳までの高校生十五人が、「自己認識」をテーマにドキュメンタリーを制作中。約三時間、学校近くの民家や住宅街をバックに撮影し、作品制作の醍醐味をあじわった。
 それぞれ「撮影」「音響」といった役割を持たされている。MTVに勤務するファビオ・アランテスさんが、テーマの掘り下げ方やビデオカメラの使用などについて指導した。
 チバナさんは、「自己表現の方法を学んでもらいたい。でも一つの仕事をするには、チームワークが大切。自分のことだけを考えていたら、うまくいかない。作品を仕上げていく中で、他人の意見に耳を傾ける人間になってほしい」と力を込めて語る。
 プロジェクトは毎年八カ月間。週に一回ドキュメンタリー制作のほか、心理士によるカウンセラーや作文指導、写真撮影などがある。十二月に、各校が作品を提出して優劣を競う。プロジェクト内容はゴバダ・ヘンリさんが練った。
 同校生徒からは「文筆家になって世界に飛び出したいという目標が出来た」、「自分のことを話したくなかったけど、コミュニケーションを取れるようになった」などと、内面の変化を物語るコメントが聞かれた。
 「一番恐いことは何?」「今悲しいことは?」。プロジェクトがスタートして間もなく、心理士がそんな質問をした。レオノル・レンデシ校ではないが「将来殺人を犯すかもしれない」「今日、父親が逮捕されました」といった答えが返ってきたこともあるという。
 「経済活動をするだけでなく、私たちは社会に貢献する仕事もこなさなくてはならない」。歯科医のチバナさんが診療所もそっちのけでNGOに情熱をそそいているのには、実は暗い過去が背景にある。
 八年ほど前、青年会議所の会頭をしていた時だった。ある日の深夜、不審な物音に気付いて目を覚ました。弟が自宅内を見回ったが、一室に潜んでいた強盗に出くわし、三発の銃弾を浴びて死亡した。
 「犯罪人だって、銃を持って生まれてくるわけではない。彼らの環境が人格を変えてしまうんだと思います。教育の質を上げて将来に希望を持たせることで、社会から暴力がなくなっていくのではないでしょうか」。彼女の中で、この心境に達するまでには、長い紆余曲折があったようだ。
 「エスクレーヴェ・ベレーザ」は「ジア・ダ・ベレーザ」と銘打ち、それぞれの学校で地域住民を対象に年に数回、散髪などの奉仕活動も実施している。生活習慣病の無料診察も組み込んでいきたい考えだ。
 ボランティアとして千人以上が登録しており、書記や監査役など理事は主に日系人が占めている。一部の専門家には手当てを払っているため、多くのスポンサーを捜している。問い合せ電話番号=5579・0938。詳細はサイト(www.escrevebeleza.org.br)を参照。チバナさんのEメールはrosana@escrevebeleza.com.br。

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