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苦労もにじんだ風合い=第9回日伯工芸美術展=陶芸のカマルゴさんに大賞

2005年11月12日(土)

 今年で九回目となる「日伯工芸美術展」(主催・文協工芸美術委)が十日夜、開幕した。会場の文協大サロンと貴賓室には公募で寄せられた七十人の作品百五十六点が並び、授賞式も行なわれたこの日、訪れた約三百人の目を楽しませた。
 大賞の「ゆうセラミカ・イ・アルテ」を受賞したのは陶芸のシウマラ・マリア・デ・カマルゴさん。「十八日に五十歳になる。最高のプレゼント」と、感激した面持ちをみせた。
 素朴だが荒々しい土肌と、薪の灰が自然釉(ゆう)となってビードロ状に溶けた部分のコントラストが美しい。「信楽焼や伊賀焼の特徴を受け継ぐ作品」(審査員)で評価された。
 パラナ州生まれのサンタカタリーナ州育ち。幼少の頃、ファッションモデルをしていたことも。陶芸のキャリアは二十年以上。日系人の夫と訪日し、魅了されたのがきっかけだ。
 栃木県益子とブラジル・カンピーナスに登り窯を構え、往復生活を送る。前身の「工芸展」を含めると四十年の歴史がある同展への出品は初めてだ。三点のうち二点は日本で制作した。
 一線で活躍する作家が運営する、国内最大規模の展覧会。「つらかった日々もあったけど、きょうの受賞で全部忘れました。すごくうれしい」と、流ちょうな日本語で話した。
 「長年の痛みや苦労がにじみ出ている。技術的にも素晴らしい」とはブラジル陶芸界のパイオニアで審査員の鈴木章子さん。「憧れの人」から祝福の言葉が贈られ、感涙にむせんだ。
 展覧会は十七日まで。当日表彰された他受賞者は次の通り。
 トリアルテ賞=セシリア・アケミ・ナカミチ(陶器)アルテ・エン・クラフト賞=モリト・エビネ(家具)アクリレックス賞=ベッテ・マルチンス(陶器)ダウトン・ベウムデス・デ・トレド(陶器)岩井和子(七宝)ルイス・エドゥワルド・ミゲル・パルド(木工オブジェ)マサコ・ヤマモト・コガ(陶器)

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