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特別寄稿=史料館会議に参加して=バストス史料館=JICA青年ボランティア=中村茂生=連載(上)=横のつながりの意義確認

2005年12月08日(木)

 十一月十八日、サンパウロ文協移民史料館の呼びかけに応じたブラジル各地の日本人移民関係資料館による会議がサンパウロ文協会議室で開かれた。
 各施設の担当者が、初めて一同に会した会議になった。私はバストス史料館勤務の青年ボランティアとして計画段階から関わってきたものの、通訳付で参加しなければならなかった会議の全体をくまなく把握できたかといえば甚だ心もとないのであるが、個人の責任ということにしてもらって、今回まず、会議の計画から実施、印象をまとめ、次回、課題、今後の方向などについて述べてみたい。
 会議に出席したのは、サンパウロ州から、文協の史料館のほかに、レジストロ、ペレイラバレット、東山農場、バストス、パラナ州からロランジャの計六施設である。日本人移民関係の資料館、あるいは資料室のような施設が他にも多数あることはわかっていたが、今回はひとまず有志でということで計画がすすめられた。
 準備の段階で配布された計画書では、資料館間で横のつながりをつくることが提唱され、その意義として次のような項目が挙げられていた。
◎資料の整理、保管、展示等にかんして、他館からよりよい方法を学んで実践することができる。あるいはその方法について共同で研究することができる。
◎経営方法にかんして情報交換ができる。
◎資料館が共同して特別展を企画すれば、質の高い展示が実現でき、かつ経費の削減にもつながる。それによって来館者増が見込める。
◎資料の貸し借りを円滑、安全に行うことが可能になる。
 バストス史料館としては、いずれも魅力的な項目であったが、果たして他館にとってわざわざ人をサンパウロに派遣させるほどの内容なのか疑問もあった。 連絡係を買っては出たが、いざ電話やメールの段になると、「何のためにそんなことするの?」という反応を覚悟した方がよいように思えた。
 しかしそれはまったくの思い違いで、実に率直な賛同を得ることができた。意義を改めて説明する必要はまったくなかった。それぞれが資料館の仕事に普段から真剣に取り組んでいて、すでに問題の所在が十分認識されていたということだろう。担当者は、熱意にあふれた二世、三世の方たちであった。
 会議は午前中、各資料館の現状と課題を報告しあい、文協移民史料館の見学をした後、サンパウロ市ブラスにある州立移民博物館に移動、講演を聞いて同館を見学、再び文協史料館に戻って総括会議を開き、次回開催日程などを決めて散会となった。
 今回の会議は、顔合わせ的な性格が強かったが、計画書に謳われた諸項目が実現される下地は十分整ったといえるだろう。席上、ブラジル日本移民史料館運営委員会の大浦文雄副委員長から出された「連合会を設立してはどうか」という提案は、次回実質的な検討がされなければならない重要な課題である。
 しかしなによりも、これまでせいぜいサンパウロの史料館と一対一でしか結びついていなかった各資料館が、横につながるきっかけとなったことは、今後に新しい展開を期待させるひとつの成果であったといえる。
 また、特別講師として参加した州立移民博物館の前館長ミドリ・ヒグチ女史、サンパウロ州文化局博物館担当ベアトリス・クルーズ女史らの面識を得たことは、今後、各資料館の財産となろう。
 この顔合わせで、ひとまずそれぞれに糸がつながった。この糸を、太く確かなものにすることが今後求められている、というところだろう。(つづく)

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