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デカセギ子弟教育の問題=サンパウロ市で9月に=シンポジウム=報告書まとまる=邦訳し、文科省にも送付へ

2005年12月21日(水)

 デカセギ子弟の教育問題をテーマに九月に開催されたデカセギ比較教育シンポジウムの報告書がこのほどまとめられた。
 このシンポジウムは文化教育連帯協会(ISEC、吉岡黎明会長)と日伯研究者協会(渡部一誠会長)が共催して、九月十一、十二日の二日間ブラジル日本文化協会で開催。日本ブラジル双方から二十人の研究者が出席して、デカセギ子弟の教育問題を中心に現状を報告した。
 シンポジウムでは、デカセギ二十年の歴史を振り返るとともに、子弟の不就学や、ブラジル学校の月謝が高く数が少ないこと、バイリンガル教育が進んでいない教育現場の現状などが報告された。
 また高校大学への進学率が低いことや、日本の社会や帰伯後のブラジル社会への適応が困難であることなど、デカセギ子弟を巡って現在起こっている問題を指摘。このほか「不就学ゼロ宣言」をした岐阜県可児市をはじめ、日本の地方自治体、民間団体が進める取組みも紹介された。
 報告書はシンポジウムを振り返るとともに、日伯両国、特にブラジルの公立学校における子弟の受け入れ態勢を整備することを提案。親の仕事が安定することで子弟も落ち着いて学校に通えるとして、外国人の労働環境を改善することを求めている。
 シンポジウムを主催したISECは現在、報告書の日本語への翻訳をすすめているところ。完成後、年内をめどに文部科学省をはじめ日本の関係機関に送る予定だという。
 同協会では州や市の教育委員会に帰伯デカセギ子弟の問題をPRするとともに、特に日系人が多い地区の学校には、土日や時間外の指導など就学支援を要請している。また、協会が中心になって、日本にブラジルの教科書を送る運動も進めているという。
 吉岡黎明・ISEC会長は「ブラジルでこういう運動をしていることを、日本でも知ってもらうとともに、両国が民間事業で交流しながらどういう手伝いをしていけるかを探っていきたい」と期待を表わした。

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