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日伯学園=今度こそ

1月1日(日)

■「アルモニア」基盤に=大浦、宮尾氏ら情熱注ぐ

 今度こそ、日伯学園を――。百周年記念事業の一つ、アルモニア学園高校棟拡張工事構想をベースに、日伯学園化するという計画が進んでいる。同学園は、五十二年前に力行会が中心になって作った学生寮が前身になっており、すでに三千人からの大学生を輩出したコロニア有数の二世人脈を抱えた団体だ。当然、日本文化や日本語教育は行われているが、それをさらに強化し〃日伯学園〃化するという。では、なにが日伯学園か? その問に答えるべく、現在この構想を進めているグループは、サンパウロ市が誇る民族系学校を視察して回っている。教育問題から垣間見られる、次の百年への課題を聞いてみた。

■毎週集まり研究、調査

 「どうしても、やらにゃいかんと思っている。余命があれば、こいつを最後の仕事にしたい」。ブラジル日本百周年祭典協会の総務副委員長、大浦文雄さん(81、香川)は強い意気込みをみせる。もともとは別だったアルモニア構想と日伯学園をくっつけようと言い出した仕掛け人だ。
 すでに記念四事業に選ばれており、承認済みの事業案を修正する形で日伯学園にすることになっている。
 現在、日伯学園を検討している宮尾グループを中心に他の民族系学校の視察を行っており、その報告書と共にどのように日伯学園化するかという提言書を作っている。昨年末から毎週のように会合を開いており、記念四事業中で最もダイナミックな動きをみせている。
 アルモニア学生寮は一九五三年に創立された。当時、和田周一郎(一九〇一―八八年)さんらが地方を回って説得し、集めた資金で一万平米の土地を買い、建設した。当初から「人づくり」がそのモットーとして謳われていた。
 記念四事業いずれも、資金をどうするかという問題を抱えている。しかし、アルモニア構想はすでに土地があり、教育事業が順調に進められているという点で、一歩ぬきんでた印象を与えている。さらに、コロニアの念願ともいえる日伯学園化することで、百周年記念事業のうちでも主役クラスの風格まで備えそうだ。

■OB三千人を糾合

 大浦さんは「なんといってもアルモニアの財産は三千人を超える卒業生の存在です。彼らの中から中核となって手伝ってくれる五百人を集めれば、現地であるていど資金を調達できるのではと考えています」と強調する。五十二年間に培われた人脈を、いまこそ総動員して実現に向けて奮起すべきだと、大浦さんは呼びかける。
 学生寮第一期生には、渡部和夫(サンパウロ州高等裁判所元判事)、和田忠義(現アルモニア理事長)、山内淳(元文協会長)らがいる。かつて、ここに宿泊して日本語の授業を受けながら予備校や大学へ通った。つまりOBの大半は大学卒だ。「一平卒でなく、士官ですよ、士官」と大浦さんは例える。
 和田理事長は説明する。「学生寮の最初の定款から、学校化することや日本文化センターにすることは謳われている。今、まさにその道筋に沿って、先人の理想を実現させているところです」。九三年、学生寮創立四十周年を記念して、アルモニア学園が創立された。
 当時の寮長、渡辺次雄さんは生前、本紙の取材に答え、「これがアルモニアとしての日伯学園だと思っている」と語っていた。このような強い思いが牽引車となり、理事会が一丸となって実現した。創立前には、ジャクト農機の創立者、西村俊治さんに導かれる形で、渡邉さんは南伯のドイツ人学校などを視察して回った経緯もある。
 「コロニアの周年事業には箱モノは付き物だった」と大浦さんは振り返る。最初が移民二十五周年で建設された「日本病院」(現サンタクルース病院)、戦争をはさんで五十周年には日本文化センター(現文協ビル)の定礎式、七十周年には移民史料館、八十周年には日伯友好病院だった。「それぞれ今も立派に活用されている」という。
 そして、九十周年にでてきたのが「日伯学園構想」だった。土地の手配がつかず、結局は実現しなかった。「今もその余韻がくすぶっている。(日伯学園に関する)宮尾論文を読み、このまま論文で終わらせてはならない」と一肌脱ぐ決心をした。

■民族系数校を視察

 日伯学園構想に関しては、宮尾進(サンパウロ人文科学研究所顧問)さんを中心とする宮尾グループが検討を進めている。目指しているのは、サンパウロ市にある他民族系学校にひけをとらないコレジオだ。
 そのため、イタリア系ダンテ・アリギエリ(以下、ダンテ校)、スペイン系ミゲル・デ・セルバンテス(ミゲル校)を視察した。この一月にはドイツ系ポルト・セグーロ(ポルト校)へも行くことになっている。いずれも、本国の文化や言語を普及しつつ、有数の進学校にもなっている優秀校だ。

■教師も充実「ミゲル」校

 ミゲル校では小学部で週五回もスペイン語の授業がある。ポ語六回、英語四回に比べていかに力を入れているか分かる。高等部では、スペイン語およびスペイン文学が週四回、スペインの地理週三回(一年)、スペインの歴史・美術が週四回(二年)がすべてスペイン語で行われる。さらに、物理、化学、数学はスペイン語とポ語の併用だ。
 バイリンガルとなることが目標であり、本国の卒業資格もとれる。スペイン文部省と提携しており、金銭的支援こそないが、校長クラスの教育者と教師約八人が本国から派遣されている。
 生徒数は千五百人に対し、教師数は百三十人と多い。生徒十人に一人の教師を割り当てている。同じ教化をポ語とスペイン語とで教え分ける関係からも、通常の学校より教師人件費がかかる。
 そのため、幼稚部の月謝は千百六十レアル、小・中等部では約千三百レアル、高等部では千六百レアルと高い。料金的には最優秀進学校として有名なバンデイランテス校並みだ。
 スペイン系移住者の大半が一八〇〇年代後半に入ったことを思えば、創立は一九七八年と新しい。甥っ子が同校の第一期生の宮尾進さん(75、アリアンサ出身)は、「それまで代表校がなかったとはいえ、サンパウロ市の高級住宅街モルンビー区に三万五千平米の学校を建てたことで一気に挽回した」と高く評価する。
 スペイン語はEU、メルコスールの公用語として認められており、四億二千万人の話者がいる英語に次ぐ世界言語であることが、同校の存在を強力に後押ししていることはいうまでもない。
 むしろ、メルコスールをにらんで戦略的にスペイン語を話す優秀な従業員を確保、同時にスペイン文化の普及を狙って作ったと考えたほうが納得できるタイミングだ。そのため同校の建設には、スペイン系企業がこぞって協力した。
 日本にしてもBRICSの一角に食い込むために、日伯学園建設に手を貸すぐらいの投資をするのは、無駄にはならないだろう。

■伝統誇る「ダンテ」校

 ダンテ校はパウリスタ大通りに近い立地で、中流階級子弟を中心に約四千五百人もの生徒を抱えるマンモス校だ。
 創立は一九一一年と、第一回移民船・笠戸丸の三年後という伝統を誇る。イタリア系移民と本国政府の拠出金により敷地を購入し、創立。当時から第二次大戦が始まるまでは、いわゆる母国語で教えるイタリア人学校であり、本国政府の支援を受けた。戦時中にブラジル政府の指導下に入り、校名を変更、戦後、旧名に復帰した。
 現在、同校は純然たるブラジル学校であり、本国政府からの支援はまったくない。
 イタリア語授業は、小・中等部で週二回のみ。同校では、語学習得のレベルを上げるより、イタリア文化の理解を広げることを重要視している。半日制で、月謝は八百九十~千三百レアル。

■日語重視し高校水準高校に

 宮尾グループの方向性としては、「日本の大学へ進学できるぐらいの日本語能力を持たせたい」との希望を持っている。いわば、ミゲル校の方向性といえよう。「厳格な教育方針」「ハイレベルな授業」「卒業生に対する評価が高い」などの目標を掲げる。
 現在、アルモニアで日本語は正課として教えられているが、週二時間のみだ。同グループの鈴木正威(73、青島出身)さんは「日本語能力を強化したい」と考える。できることなら、中等部で日本語能力試験二級レベル、高等部で一級レベルを目指すぐらいの体制を作りたいとのアイデアだ。
 受験勉強の厳しくなる高等部では、普通科と日本語専科に分ける。ブラジルでは高等部までで十一年間だが、日本は十二年間。足りない一年間を、徹底的に日本語を強化する補習期間にする。「そのためには、日本から教師を派遣してもらうなど、日本との連絡を密にする必要がある」と鈴木さんは強調する。
 一月中ごろまでに他民族系学校視察報告書と、宮尾クループの提言書をまとめ、アルモニア学園理事会に渡す。そこでの検討を経た上で、実際の検討委員会を組織し、二月までにプロジェクト修正を完成させるスケジュールになっている。
 長年、日伯学園の必要性を説いてきた宮尾さんは、「今度こそ、実現したい」と熱く語った。

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