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『女性天皇容認』に世論沸く=国民の70%余支持=より慎重な論議、検討を

1月1日(日)

 平成十七年の皇室は清子さまのご成婚で華やかな彩りに包まれた。秋篠宮さまの友人である黒田慶樹さんとの結婚式は庶民的で「平成流」だったし、両陛下が披露宴にご出席するという異例尽くめだった。紀宮さまから黒田清子さんとなられても夫の慶樹さんと新宿御苑の散歩を楽しまれ、ひとりの市民としての暮らしになれようと頑張っている。こんな微笑ましい皇室に11月も暮れようとするときに「皇室典範に関する有識者会議」が「女性・女系天皇を容認」の報告書を提出し世論は沸いている。小泉首相も皇室典範の改正には意欲的だし―新しい年は皇室の歴史を塗り替えるような画期的な年になるかもしれない。

 天皇陛下は米露大統領やモロッコ国王とのご会見などの公務をこなされ忙しい日々を過ごされている。陛下は日ごろから国民と近い皇室を心がけておられ警備についても「大げさにならないように」と希望され、高齢者の養護施設をご訪問になっても、お年寄りと親しく語り合いながら「いつまでもお元気で」と励ましの言葉を忘れない。
 陛下のご日常は過密スケジュールであり超多忙と申していい。国会で可決された法律への署名から各国大使の信任状を受けたり、帰国する大使らとの接見も大切な仕事である。内外の情勢についての閣僚などからのご進講も大事だし、皇室としての行事や神事も欠かせない。陛下は前立腺の手術を受けられ今も薬事療法を続けているので公務を渋りなくこなすのは並みの努力では不可能と云っていい。それでも頑張っておられる。皇太子と秋篠宮もご活躍しており、国民からの尊敬の念が強まってもいる。皇太子には、雅子妃殿下の体調がすぐれないの心配があるけれども、近ごろは少し回復されているごようすだし、あの清清しい笑顔がきっと戻り、外交官の頃の初々しさを発揮するものと信じたい。雅子さまの適応障害は「着実に回復しているが、続けて公務をするまでには治っていない」と医師団は発表し「雅子さまが直面しているストレスは想像以上に強い」と強調している。このような現状をふまえて―雅子さまを取り巻く環境の改善を東宮職に求めているが、愛知万博を視察されるなど少しずつながら回復しつつあるのは間違いない。これからも療養を第一に心がけ一日も早く元気な姿を見せてほしい。
秋篠宮も皇室外交や国内の各種行事に積極的に参加し、ご専門の研究を進められたりと忙しい日々を過ごされているのは頼もしい限りである。清子さまと学習院時代からの学友である黒田慶樹さんの仲を取りもちすっかり有名になられたが、この楽しくも嬉しい話はきっと「秋篠宮流」とでも云うのに違いない。秋篠宮さまの良さは、ご次男らしく大らかでざっくばらんなところであろう。庶民がよく云う「気さく」さがよく現れたのは黒田ご夫妻の仲人役であったし、これからも皇室と国民との月下氷人としてご尽力戴きたい。
 このように明るい皇室なのだが、大きな悩みがあるのも否定できない。云うまでもなく天皇の後継者をめぐる問題である。今の皇室では秋篠宮さまが男系では最も若い。それでも40歳になられたし、現在の皇室典範にある「男系男子」の規定によれば後継者は段々と少なくなってしまう。このために宮内庁や内閣官房が中心になって秘密裏に対策を討議し検討してきた。それが首相の諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」である。有識者会議の協議は何回も続けられいろいろな場面を想定しての検討も繰り返された。その結果は「女性・女系天皇をも認める」というものであった。
 これは今の男系皇室の伝統を破るものであり、学者にも政治家にも反対論は根強い。新聞や総合雑誌などのマスコミ論調も支持派と反対論が対立しているのが現状である。これまでにも十代八人の女性天皇はいる。けれども、推古天皇や持統天皇らは便宜的に「中継ぎ天皇」になったものにすぎないの説明があるし、政治家でも平沼赳夫氏らは「男系」を支持している。もっと真剣に議論されるべきは、女系の天皇を認めるの方針を認めるかどうか―であろう。今上陛下は百二十五代の天皇だが、これまでの歴史をたどると「女系天皇」はいない。また、認められることもなかったのである。
 三笠宮寛仁さまが発表した論文は「女系天皇に反対」であり「男系皇室」を尊ぶべきであると主張し話題になった。この難しい問題への考え方は学者や識者も真っ二つになっているけれども、2000年の伝統をもつ皇室の歴史を引っくり返すものだけにより慎重さが望まれよう。ただし、有力新聞の世論調査によれば、女系天皇を認める人が70%を超している現実にも目を向ける必要があろうし、政府系の調査でも同じような傾向を見せている。 もうひとつ付け加えると、十代八人の女性天皇は、在位中は全員が独身であったし、ご懐妊されてもいない。皇婿(皇夫)をもたれるのも許されてはいない。つまり、皇位継承のために女性天皇は半ば便宜的に認められていたが、女系天皇は否定されたのが皇室の伝統であり歴史であることにも注目したい。そうした観点からすれば、女性天皇と女系天皇はまったく別のものであるとの認識をしっかりと持ちたい。
 小泉首相は皇室典範改正に前向きの姿勢を見せているが、国会審議で一方的に押し切るのではなく、「男系皇室の伝統を守るべし」の反対意見にも耳を傾けるべきは勿論である。
 と、同時に国家的な議論が大切なのでありマスコミも論戦を展開するくらいの覚悟がいる。また、国民の間にも大いに議論が起こっていいし、政府も「女性天皇と女系天皇」についての十分な説明が必要なのは云うを待たない。    (遯)

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