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コラム 樹海

 中国に華陀という医者がいた。今の麻酔薬を使う名医で庶民から親しまれたのだが、魏の武帝の頼みを断ったために処刑される。山椒や桔梗、肉桂などを調合してつくる屠蘇は、この華陀が処方したものであり、中国から日本に入ってきたものだという。この正月には本格的な屠蘇とまではいかないが、それでも灘の銘酒を傾けながら雑煮を楽しんでいるうちにきょうは七日。七草粥の日である▼せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ―は、子供の頃に俎板を叩きながら母親に教わり誰しもが覚えたものである。六日の晩に歌を唄いながら七種の菜を小さく刻むのだが、歌の文句はもうすっかり忘れてしまった。七日の朝にこのお粥を食べると一年中を元気に暮らせるとされ、小さい子は何杯もお代わりしたのも懐かしい▼ところが―である。ブラジルにきてからは、一回も食べたことがない。一般の家庭では仏の座や芹などを叩き香ばしい粥を食膳に乗せるのだろうけれども、だが―必ずしも各家庭でやっているとも思えない。梶山北民さんの「ブラジル季寄せ」にも「七種(ななくさ)」はない。あるいは、七種が揃わないのかもしれない。とにかく、喧騒な大都会のアパート暮らしでは、あの七つ菜は想像の世界に生きるものと云ってもいい▼それにしても、餅の文化や雑煮はきちんと伝わるのに―とあの目出度くも微笑ましい色鮮やかな七草粥がないのは無念。それでも心を寄せる人は多いらしく三原春風には「七草の五草までは吾が庭に」の句があり、来年こそは―と楽しみにしている。(遯)

06/01/07

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