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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年7月3日付け

 州都マナウスから飛行機に乗り、アマゾン河沿いに四百キロ下ったが、眼下には一面の緑が広がるばかり。そこに忽然とパリンチンスが現れる。町自体がまるで、インディオ伝説に出てくるおとぎの国のようだ。牛祭り(ボイ・ブンバ)には独自の決まり事があり、どんな有名な芸能人でも地域の人でないと出場できない。審査基準は伝統的であるほど高得点だという▼その日だけ参加をする芸能人がこぞって山車に乗る、リオやサンパウロ市のカーニバルとは一線を画す。また、アフロやレゲエのリズムを〃モダン〃なものとして取りいれるサンバ界に対し、ボイ・ブンバは徹底的に地域に根ざしたインディオ音楽を基調としたリズム、昔からの説話の登場人物、実際に周りに生きている動物などにこだわる▼アマゾナス州観光局のテオ・コレア広報担当は「地域の独自性を大事にするがゆえに、ここは世界で有名になりつつある」と祭りの意義を説明した▼グローバリゼーションの現在、全てが欧米基準に平準化される傾向が強いが、それへの反発として地域文化を重要視する動きも強まっている。地域文化を尊重する機運の高まりと同時に、民族としてのルーツ回帰と周囲からの理解の深まりも起きている。それが昨年の百周年が全伯で歓迎された理由の一つだろう▼その意味で、現在放送中のブラデスコ銀行のTV宣伝は興味深い。パリンチンスの牛、県連日本祭りの和太鼓奏者、イタリア移民の葡萄祭りミスなどが次々に登場し、同じ舞台で仲良く一緒に踊る演出で終わる。ブラジルではアマゾンの地域文化も、日系人の民族コミュニティ文化も、等しく重要な一部なのだ。(深)

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