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ミステリー『樹海のうねり』=松永新一さんの処女作

2006年1月25日(水)

 松永新一さん(66、福岡県出身、果樹栽培)=インダイアツーバ=がこのほど、コーヒー園を舞台にした本格ミステリー『樹海のうねり』(文芸社)を上梓した。殺害された日系人経営者の背後にうごめく、複雑な人間関係を描き出したフィクション。松永さんは「ブラジルの事情が、日本の人に分かってもらえれば」と、処女作をPRしている。
 松永さんは五九年、二十歳の時におじの呼び寄せで渡伯。六三年まで、サンパウロ州奥地のコーヒー園で過ごした。インダイアツーバに移った後、同園での体験をもとに同作品を綴った。
 「実話ではありませんが、日本ではコーヒー園の実態について、あまり知られていないのではないかと思う」と執筆の意図を話す。
 実は約三十年前に既に脱稿しており、長らく、原稿にちりが積もっていた。子育てが終ったことで出版を決意。加筆・修正して、出版社に持ち込み、出版費を折半する形で刊行にこぎつけた。
 物語は、日系人経営者、がコーヒー園内の自宅兼事務室で、死体となって発見されることから展開。捜査の過程で、同船者との関係や遺産相続をめぐる確執などが明らかにされていく。並行して、コーヒー園での生活や作業風景などが描写されている。
 「田舎にいたころは、仕事に追われて何もできなかった。三十歳の頃から、余暇を利用してこつこつと書き溜めてきた。書くのはもともと嫌いではなかったので」と松永さん。
 このほか、日系企業を舞台に一世・二世・現地採用の確執を描いた作品など、四、五冊の原稿を書いている。コロニアの文芸界とは特に交わらず、執筆に励んできた。
 「私は満州からの引揚者で、その体験から着想した作品もあります。今後、チャンスがあれば、原稿を書籍にして世に送り出していきたい」と意欲をみせている。
 日本での定価は千四百円。松永さんの電話は、19・3875・3325。

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