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果物は技術に応える=益田さん持論展開=「販売問題より重視を」

2006年2月3日(金)

 一九六一年、ブラジルに移住し、農業一筋、現在はピエダーデで果樹栽培に打ち込んでいる益田照夫さん(愛媛県出身)。「私の農業経営~果樹園経営の考え方~」と題した講演が、一月二十四日午後二時から五時半までニッケイ・パラセホテルで行われた。
 これは、「第六回日系農協活性化セミナー」(JICAサンパウロ支所、ブラジル農業拓殖協同組合中央会共催)の一環。ブラジル移住から現在にいたるまでの経験に基づいた農業経営の考え方を語った。
 「どの農業者にとっても、販売よりも技術が優先し、技術の中では土づくりが優先する。これは農業経営の基本的な考えです」という益田さん。移住当初は、サンパウロ州ピエダーデ市の戸田農場に就労。その後、自立してバタタと玉ねぎの栽培を始めた。続いて栗、富有柿に手をつけ、今や「ピエダーデの柿、栗」とまで言われるようになった。
 「栗ひろい」を催したのは一九八七年。八千本植えた木から落ちるクリを「宣伝」を目的に無料提供した。十年後には拾っただけの栗に(拾った人が)代金を支払う制度にし、その収益を日系福祉団体へ寄付するようになった。今年は二十回目。「いろいろな方が集まり、楽しみながら交流する場だと考えています」と話す。
 柿生産者協会の設立にも参加。今年で設立十年目になる。「一人、二人の生産者ではピエダーデの柿とはいえない。多くの生産者がまとまることで、〃ピエダーデの柿〃だと言ってもらえるんではないか。活発に動いてもっと宣伝したい」。
 果樹専業にした理由には生産が比較的安定しているからだという。「適用する技術の選択と適用時期が重要になる。そのポイントを誤らなければ、果樹は期待通りの反応を示してくれます」。特に剪定、整枝、摘蕾、摘花、摘果の技術にはすぐに反応する。
 益田さんが重要視するうちの一つに「生産技術」があげられる。労働者を効率よく使い、作業の能率を高められるのなら「教えるための出費」も抑えられる。「それには高度な技術を使うのではなく、労働者にとって、わかりやすい作業を用意することだ。最初から最大利益を求めるのではなく、労働者が指示通りに作業できれば利益が増大する」と強調する。
 また、「作業方法によって農場全体の収支計算がどう変わるのか、農業経営者はいつも頭に入れておく必要がある」という。収支計算の基本は畑の技術。「ブラジル農業者を観察し、気がついたことがあります。多くの方が販売熱心でも技術問題に対してさほど熱意を示していない。私は全く逆だと思います。販売問題を後回しにしても技術を先に考える」と主張し「畑の技術は生産者の一存で決められること。経営改善には、難しい販売改善よりも畑の技術改善を考えるべきでしょう」と話した。

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