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コラム 樹海

 近ごろのコロニアは嫌な話が続く。100周年記念への準備のいい加減さ。県連のゴタゴタ。コップの中の騒動ならまだしも、小さな盃で大の親父どのが「ああだ」「こうだ」の大議論?に明け暮れる悲劇―いや喜劇なのが哀しい。将に村夫子の闘いなのだが、そろそろ移民社会の悪弊から脱しないと、物笑いになる。そんな旧来の陋習の渦中に赤い花が咲く▼創立五十周年を迎えたブラジル三菱商事が、記念にと「あけぼのホーム」に日本座敷を造成し寄付したそうである。いい話ではないか。移民社会には、日本からの進出企業や商社を毛嫌いする傾向が強い。いろんな要因があるけれども、移民にとっては遠い存在でしかないのかもしれぬ。交流もまったくゼロが正確ではあるまいか▼商社マンにも、いかがかなと想われるご仁はいる。が、こんなのは極めて少ない。駆け出しの頃に、商社のトップらと勉強会を持った。その人は東京に帰ってから会長に就任した大物ではあったが、考え方や思考方式が大きい。彼は、学生を対象にブラジル語研修の制度を実施していると語った。1年をブラジルに呼び日本人のいないところへ留学させ、卒業して気にいれば就職して呉れ―の条件である▼この実業家は格別にしても、多田稔社長の移民社会への思いも軌を同じくするような気がする。日ごろからコロニアとの接点を求めているそうだけれども、今回の美挙もそんな一つと見たい。企業や商社の人々と移民は環境が異なるし意識や物の見方も大いに違うけれども、人の「情」に変りは無い。そうした情念の一つが三菱商事の「日本座敷」と思いたい。   (遯)

06/03/28

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