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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年2月19日付け

 米国の人気歌手マドンナが、なぜセーラサンパウロ州知事とあんなに機嫌良く写真に写って報道されたのか。ブラジル人の恋人に誘われてリオのカーニバル観光が目的なら、知事に会う必要はない。今年はやけにハリウッド俳優や米国社交界の有名人の来伯が多い。考えすぎかもしれないが、その裏には〃米国の隠れた意志〃があるかもしれない▼オバマ政権になって1年、明らかに中南米に対する政策が変わった、いや「戻った」というべきか。ブッシュ時代に中南米は半ば放任され、次々に左派政権が樹立し、その頭目ブラジルが国際社会で幅を利かせ始めていた▼ところが、コロンビアの米軍基地問題、ホンジュラスの政変介入劇、ハイチ支援を巡る伯米軍の主導権争いなど一連の動きからは、米国が主導権を取り戻そうとする強い意図を感じる。以前から米国の影響力が強いチリでは、あれほど人気の高かった左派大統領の後継者が選ばれず、中道右派つまり親米政権となった▼今年はブラジル、コロンビアで大統領選挙、来年は亜国、ペルーであり、ここでブラジルが中道右派の親米に戻れば、南米全体の左派の勢いが鈍ることは間違いない。その意味で今回のブラジル大統領選は、米国にとっての〃天王山〃ともいえる。その機会に中道右派の大統領候補に、世界のポップスターが近づいた訳だ▼音楽や芸能は軍事力と違って、反米感情の強い国民にも抵抗なく存在感を発揮できる分野であり、ポップスターやハリウッド映画は、米国の崇高性や威信を刷り込む、米国崇拝の〃伝道師〃的存在でもある。カーニバルで浮かれている間に、こっそりと政治的な仕込みが行われているのかも・・・。(深)

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