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「子供がケガをした」=消防署員かたる詐欺

2006年5月12日(金)

 電話で消防署員をかたり金品をだましとろうとする詐欺未遂事件が今週、発生した。「子供が事故に遭った」と嘘をつき、住所などを聞き出した後、「誘拐した」と告げ金品を要求する手口だ。被害にあったのはサンパウロ市アクリマソン区に住む六十代の日系女性Yさん。犯人と電話中に子供と連絡が取れ詐欺と分ったが、最近になって同地区で同様の事件が多発しているという。「ほかの人にも気をつけてほしい」と呼びかけるYさん。本紙に事件の様子を語った。
 Yさん宅に電話があったのは、今週のはじめ。朝七時半ごろのことだった。電話はコレクトコール。男性は消防署からの電話と話し、Yさんの娘が事故に遭ったと告げた。「〇〇はだいじょうぶ?」と娘の名を言うと、男性は娘の姓名を聞いてきた。
 子供の事故という知らせに動転したYさんは、相手の言うままに娘の住所や電話番号などを教えた。
 「娘と話したい。電話に出して」と繰り返すと、男性は突然「自分は消防署員ではない」と語り「娘を誘拐した。今いっしょにいる」と告げた。
 「ドルはないか」「宝石は何を持っている」「金庫はあるか」、男は質問を続ける。「興奮してしまって」というYさん。金品を近所の指定の場所まで運ぶ指示を受けたが、質問に答えながらも外部に知らせようと努力した。幸い、マンションの部屋の外に管理人夫妻がいた。
 夫妻に娘の電話番号をわたして電話をかけえてもらうと、娘は家で寝ており、詐欺であることが分った。気がつくと、コレクトコールで一時間近く話していた。「考えてみるとバカみたい」と笑うが、夫妻と警察に行き、はじめて体が震え始めたという。
 男性の声は落ち着きがあり、「中年男性のようだった」と振り返る。
 「それにしても何故私のところに」といぶかるYさん。最初電話に出たとき、男性から「オリエンタルか?」と聞かれたという。以前には役所から、ある日系企業家の名前を挙げて「招待状を送りたいから」と確認の電話が数回あったという。その企業家の家と間違われた可能性もあるのでは、と推測する。
 また、警察の担当官からは、最近アクリマソン地区で同様の手口の事件が多発していることを知らされた。「サンパウロの電話番号ではなさそう」だとも。刑務所の中から日系の名前の家に片っ端から電話する手口の可能性もある。
 警察からは「もう(電話は)かかって来ないだろう」と言われているが、娘の住所を教えてしまったことが気にかかっているという。

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