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コラム 樹海

 「エイズ」―。81年にNYで初めて確認されたときには「死に到る病」と恐れられ、ここブラジルも大騒ぎになった。あの猛威はあっという間に広がり世は真っ暗闇となり日本人移民も数人が犠牲になり遺族の悲鳴が今も耳に響く。数年後、予防や治療薬はすぐに開発されるの報道もあった。けれども、現在も完璧な薬品はない。それでも―感染者の治療薬はかなり効率を上げているのだが「絶対安心」はない▼と―悲しい現実を忘れてはいけない。国連の報告によると、昨年末までに6500万人がエイズウイルスに感染し、約2500万人が死亡している。そして昨年のHIV感染者は3600万人。新たな感染者は410万人にのぼり、年間の犠牲者は280万人に達したという。この現代の悪魔が発見されたときには「先進国が滅亡」とされたものだが―▼しかし、結果的には開発途上国を直撃する悲劇となり、南アフリカを始めタイなどの被害は大きい。南アの中にポツンとあるレソトは、四国の2倍に近い小さな国である。ここもエイズに襲われ暗い日々を余儀なくされている。めぼしい産業もなく生活費を稼ぐために男は南アへと向かう。ところが、帰国するときエイズを持ち帰り家族が罹患し父や母を失った孤児も極めて多い。15年前の平均寿命は60歳なのに今は35歳になったと人々は嘆く▼この厳しい現実を見れば、この難病の恐ろしさがよくわかる。スターリンや毛沢東、ヒットラ―は大量殺人鬼の批判もあるが、エイズの方が遥かに凄く、黙って静かに無辜の民を次々と黄泉へ送り続ける。   (遯)

06/06/06

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