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多様なブラジルを知る好著=麻野涼=最新作「闇の墓碑銘」

2006年6月9日(金)

 〝死の天使〟メンゲレは生きていた?――。
 麻野涼さん(ノンフィクション作家)の書き下ろし長編国際冒険小説「闇の墓碑銘」がこのたび、徳間書店から発行された。定価千八百円(税別)。
 〃ホロコースト〃の代名詞ともなっているアウシュビッツで人体実験を行い、逃亡先のブラジルで死亡したとされていたメンゲレ。しかし、埋葬されたのは別人だった!?
 文字通り〃墓荒らし〃ともいえる奇想天外なアイデアで、ブラジル、ポーランド、パラグアイ、日本を舞台に壮大なスケールで最大のナチ戦犯の実像に迫る。
 主な舞台となるブラジルでは、ドイツ系コロニアやファヴェーラなど、日本であまり知られることのない世界でストーリーが展開。
 主人公が定宿とするニッケイ・パラセホテルを始めとする東洋街、邦字新聞の世界などにも触れ、元パウリスタ新聞記者の片鱗も覗かせたブラキチ必読の一書となっている。
 ナチスに誘拐され、ゲルマン民族化に利用された子供たちのその後の人生を追ったドキュメンタリー番組に触発され、筆を取ったという高橋氏は、「これからも虚構としての『民族の血』をテーマに書いていきたい」とさらなる意欲を見せている。
 「カリブ海の『楽園』」(第六回潮ノンフィクション賞)、「蒼氓の大地」(第十三回講談社ノンフィクション賞)などを高橋幸春名義で発表、〇〇年には、ブラジルの勝ち負け問題扱った初の小説『天皇の船』(文芸春秋)を上梓している。

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