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日本人青年=人命救助活動=アマゾンでポ語通訳=遭難外国人の窮状みかねて

2007年2月14日付け

 古屋義雅さん(21)が旅行先のアマゾンで人命救助活動。「言葉のわからないはがゆさは、よくわかるから。とにかく助けたいと思った」――。古屋さんはアマゾンで台湾人観光客が行方不明になった際、同行していたポルトガル語のわからないアメリカ人の通訳をかってでた。事件は現地紙で大きく報じられ、観光業の安全のあり方が問題になっている。「公務員は冷たかった。誰も助ける気がないし、いざという時に頼れない」。古屋さんは一年間のブラジル滞在で、ブラジルの〃裏と表〃を知った。
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 事件が起きたのは、去る一月十四日。マナウスからほどなく行ったネグロ川で台湾人のシン・イェン・ペンさん(26)ら七人の観光客と一人のペルー人ガイドが乗ったボートが豪雨の中で転覆。川に投げ出された面々はネグロ川の対岸まで、四十五分間泳いだが、シンさんはたどり着くことができなかった……。
 シンさんの恋人で、同行していたアメリカ人のサラ・ライス・キャシディーさん(24)はポルトガル語がわからない。捜索依頼ができなければ、現状すら知ることが難しい。
 古屋さんは、翌十五日に旅行先のマナウスで事件を知り、自分が雇ったブラジル人ガイドのクラークさんとともに、英語とポルトガル語の通訳を引き受けることにした。
 「サラは、皆がウソをついてる。私はだまされているって、泣いてたよ」と古屋さん。ペルー人ガイド、転覆した船を運営していた旅行会社、提携先のホテル、どこも捜索に協力しようとしない。
 海軍のマナウス部署に船の増援を要請するも、同署が所有している船は二隻のみ。地域の海軍駐屯地へも足を運んだが、「国際法上での捜索規定は二日間。義務は果たしたのだから」と、冷たい待遇だった。
 「全力を尽くしてるって言うけれど、じゃあ具体的に何をしてくれるのかが全然出てこない」。
 結局、消防署でヘリコプターの捜索を依頼。サラさんは二時間の捜索の費用、七千レアルをカードで支払った。「カードも本当は(お金を)引き出したのに『出来なかった』とだまされて、悲惨だった」。
 古屋さんは十九日のシンさんの遺体発見、サラさんの家族の来伯を聞いて、マナウスをあとにした。「僕は外人としてここに居て、言いたいことが伝わらないストレスは経験してきた。だから必死でやっていただけ」。
 一月二十一日付現地の「A CRITICA」紙は「怠慢な観光業界」と題し、今回の事件を取り上げ、マナウスの観光会社やホテルが旅行者の安全管理を怠っていると非難した。シンさんの事件では、乗船の際にライフジャケットを着用しておらず、乗船人数も過剰だったことが指摘されている。
 同地域では、昨今、船での観光客が四〇%増加。それに対し、ツアーを提供している側の設備や装備、管理体制が整っていない。海軍第九隊のアルミランテ・ジェルソン大佐は「ホテルのオーナーやガイドの利欲心が事件を招いている」とコメントしている。
 「(今回のことは)ビックリしたけど、またブラジルに来たいよ」と、古屋さんは笑顔を見せ、十四日、日本へ帰国する。

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