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コラム 樹海

 戦後の新来青年にとって、懐かしい響きのある合唱団『あすなろ』。メンバーでなくても、合唱団に対してなにか甘酸っぱさを覚える。新来青年が青春時代から壮年に入るまでの間、大事に側におきたいような気持をおぼえる存在だった▼最近、合唱団の写真を記録し、コーラスを流したDVDが元メンバーたちによって製作された。現在、平均年齢が六十代の終わり頃にある人たちには格好の懐古の〃円盤〃になるだろう▼『あすなろ』の指導者は牧師の宗像基さんだった。伝道に来伯したときは、五〇年代の終わり、四十歳代前半の働き盛り。新来青年が仕事になじめず、さまざま〃問題〃を起こしていた頃だ。なんとかしてあげたい、と思ったのではないか。そこで音楽。来る者拒まず、賛美歌に限定せず、取り入れる曲目は広範囲だった。合唱団の技術レベルは高まった▼宗像さんは「拘(こだわ)らない」人だった。ある意味では型破り、言いたい放題。左翼的言辞を弄することもあったが、決して左翼ではなかった、と元メンバーの一人が言う。若者同士が恋愛関係から結婚まで到達した際は、お金がほとんどかからない結婚式を自ら構成、進行した▼説教もずばりで新鮮だった。あるとき、年配の客が式後、余興に「逃ぃげーた女ぉー房ーが」(「浪曲子守唄」)と唄った。宗像さんはニコニコして聴いていた。宗像さんを移民とは言わないかもしれないが、最近あのようなキャラクターの強い人物は見当たらなくなった。(神)

06/06/23

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