ホーム | 日系社会ニュース | アラサツーバで全伯相撲、南米大会=4カ国、15チーム、250人=日本高校選手団と交流対決=参考になった公開練習=ブラジルのパワー=日本の技と礼儀

アラサツーバで全伯相撲、南米大会=4カ国、15チーム、250人=日本高校選手団と交流対決=参考になった公開練習=ブラジルのパワー=日本の技と礼儀

2006年7月26日付け

 ブラジル相撲連盟(赤木政敏会長)主催の「第四十五回全伯相撲選手権大会」、「第十一回南米相撲選手権大会」が二十二、二十三の二日間にわたり、アラサツーバ市で開催された。白熱した試合が繰り広げられ、訪れた相撲ファンを沸かした。今大会の目玉は、石川県北国新聞社(山本与志雄団長)主催で、全日本高校相撲選抜選手団が同大会に特別参加したこと。代表団は、二十二日に模範練習を行い「本場の稽古」を披露したほか、二十三日には南米の各国代表との親善試合をおこない交流を深めた。高校生たちはブラジルの選手の印象を「強い。パワーがある」と驚いた様子で語り、一方ブラジルの選手も「本場の相撲を見ることができた。今後の参考にしたい」と選手団の来伯を喜んだ。赤木会長は「大会期間中、多くの人たちが大きな拍手をもって応援してくれた。ブラジル相撲がますます発展していくことを期待したい」と振り返った。
 今大会は、ブラジルの各地区を代表する全十五チーム、男子、女子合わせて約二百五十人が参加。遠方からはパラー州、リオ・グランデ・ド・スル州から駆けつけた。初日午前中、幼少、少年、青年、大人の部の団体戦が行われ、ベスト4を選出。昼過ぎからは日本代表団の公開練習が行われた。
 幼少のときから相撲をしてきたパラグアイ代表のフランシスコ・田中さん(20)は、百八十度足を開く日本選手の「股割り」を見て「この柔軟性はすごい」と驚いた様子だった。午後からは男子、女子でそれぞれ軽量、中量、重量、無差別の階級別にわかれて試合が行われ、ベスト8を決めた。
 翌日の午前、前日勝ち残った選手たちが、世界相撲選手権大会出場の座をかけて白熱した試合を展開。優勝決定戦では会場が揺れんばかりの声援で包まれた。
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 「日本の選手を見たくて来た」という声がたくさん聞かれた今大会の目玉である国際親善試合。日本の高校選抜とブラジル、パラグアイ、アルゼンチン代表による団体戦と個人戦が行われ、午後からの開始に合わせて会場は観衆で溢れた。
 一番の盛り上がりを見せたのは、重量級ブラジル代表の青山リカルド選手と日本代表の魚住洋輔選手との一番。がっぷり組んだリカルド選手が魚住選手を土俵外へ吊りだすと、会場からはどよめきともいえる驚きの声が巻き起こった。試合結果は、団体、個人とも日本が上位を占めたが、ブラジル代表は団体で三位に食い込んだ。
 試合後、代表団の大澤恵介代表監督は、十年前に日本の選手をつれて来伯した時の様子を振り返りながら「ブラジルの相撲は格段にレベルが上がっている。真剣にいかなくてはならなかった」と語った。初めてブラジルの選手と試合をした高校生たちは「強かった。何よりもパワーがすごい」と口を揃えた。
 ただ、今回の交流試合でブラジルの選手たちにも課題が残った。代表団の山本団長が「彼らは下からの突き、押しに慣れていない」と語るように、持ち前のパワーを生かしてがっぷりと組めない相撲に弱い。リカルド選手のように相手とうまく組んで、力で圧倒するシーンは序盤では見られたものの、後半からは弱点をみた高校生力士が、一回りも大きいブラジル選手を次々と破るシーンが目立った。
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 大瀧多喜夫スドエステ相撲部長は世界大会までに「合宿などでテッポウを覚えさせる必要がある。また相手の突きをはずす技術の習得も課題」と語った。パラグアイ代表の野中照之さん(19)も「日本の選手はまわしをとらせない技術がうまい。両手突きも参考になった。この技術を盗んで来年の大会で生かしたい」と決意を示していた。
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 日本代表団の来伯は、山本団長や大澤監督が語っていた相撲の心である「美しさ、力強さ、礼儀正しさ」がブラジルの若い力士たちに紹介されたことに意義がある。相撲を通した「日本の心」の広がりは、ブラジル相撲関係者のみならず、多くの相撲ファンが期待するところ。日の丸を振りながら日本代表団を応援していた石川県相撲連盟参与の中西弘さんは「ようこんだけ南米で相撲を発展させてくれたと思う」と喜んでいた。
 来場者の塚田千歳さん、倉岡美幸さん姉妹は「日本から若い子が来てくれて嬉しい。今日の相撲を見ていると、相撲好きだった父を思い出す」としみじみ語っていた。
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  以下主な試合結果(一位のみ)。『第四十五回南米相撲選手権大会』[男子個人]無差別級テヂ・ヴィトール・バルビラット(SD)、重量級青山リカルド(NS)、中量級アウラン・ガルヴァン(SD)、軽量級ユキオ・モリイ(SD)、青年ピリオ・デ・モウラ(PR)、少年ジョアン・アントニオ・ボンフィン(PL)、幼年タシオ・ホシナ(PR)
 [女子]無差別級アレサンドラ・マルケス(PR)、重量級アナ・クラウジア・ゴメス(NR)、少年パメラ・コエーリョ(SP)、幼年ジュリアーナ・ロドリゲス(SD)
 [団体男子]無差別(SD)、大人(RGS)、青年(SD)、少年(SD)、幼年(SP)、[団体女子]無差別(PR)、大人(LR)
 『第十一回相撲南米相撲選手権大会』無差別級青山リカルド(BR)、重量級青山リカルド(BR)、軽量級アウラン・ガルヴァン(BR)、軽量級ガブリエル・パレイラ(AR)
 なお、大人の部の各階級優勝者は十月大阪堺市で開かれる「世界相撲選手権大会」に出場する予定。

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