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「政府支出どれだけ抑える」=選挙の論点、マラン氏講演

2006年7月27日付け

 ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)が七月の定例懇親昼食会を、二十一日、インテルコンチネンタルホテルで開催した。ゲストの前財務大臣のペドロ・マラン氏は「ブラジル経済の現状と今後の見通し」について、ルーラ政権の成功と失敗を踏まえて講演を行った。
 マラン氏は「日本については教育、技術などのよい印象がある」と切り出し、「日伯両国関係の拡充には商業のみならず工業などの分野での直接投資が重要。日本移民百年を機に、両国関係緊密化の促進とコロニアの拡大を望む」と講演を始めた。
 近年のブラジル成長の要因は、(1)アジアなどに見られる世界的な発展の影響を受けたこと。(2)労働党(PT)が政策をゆっくりと変更し、政治的要素を取り除いた実用的な人材登用を行ったこと。(3)ハイパーインフレ、財政赤字、海外債務、民営化に対し、向上的な改革を推進したこと、の三点。
 ヨーロッパや日本での中央銀行による金利の引き上げ、石油価格の上昇、アメリカの財政赤字など悲観要因もあるが、「大きな問題ではない」という。
 ブラジルのGDPを維持可能にしていくためのキーワードは、インフレ、政府支出、財政赤字、インフラへの投資の四つ。政府機能が大きいことと税率の高さがブラジルの成長を妨げている、と説明した。
 これからの課題は(1)投資への不安を引き起こす規制に関する問題、(2)経済に関わる司法権、立法権の機能不備、(3)福利厚生、社会保障などの基礎的分野での改革であり、「過去のようなインフレを繰り返さない、責任のある政権が選ばれるべき」、また十月総選挙に関連して「選挙討論での論点は、財務大臣や中銀総裁といった要職に誰が就くのか、政府支出をどれだけ抑えられるのかにある」とした。
 マラン氏は米州開発銀行や世界銀行の常任理事、中央銀行総裁などを歴任。九五年から〇二年まで財務大臣を務めた。
 講演に先立って行われた三分間スピーチでは、上原幸啓文協会長が移民百周年協会財務委員長の中矢レナットさんを紹介。吉岡黎明救済会会長は「憩の園」経営への協力を訴えた。

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