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日本語、日本文学、日本文化=大学教師たちの学会――ことしはUSPが開催校=2日間350人参加=要望された「博士課程の増設」

2006年9月9日付け

 「第十七回全伯日本語日本文学日本文化大学教師学会」および「第四回全伯日本研究国際学会が三十一日と九月一日の二日間にわたり、サンパウロ大学日本文化会館(Casa de Cultura Japonesa)で開催された。サンパウロ大学(USP)をはじめ、リオ、ブラジリア、ロンドリーナ、リオ・グランデ・ド・スルなどから研究者や国際日本文化研究センターの早川聞多助教授、國學院大學の久野マリ子教授、高知大学の久野眞教授らの日本からの参加もあり、講演会や口頭及びパネルによる研究発表、テーマ別の研究報告と討論を行うラウンドテーブルが実施された。また、今年創設十周年を迎えるサンパウロ大学大学院日本語日本文学日本文化プログラムの記念セッションなども行われ、会場には、二日間延べ約三百五十人が集まった。
 同学会は、日本語・文学・文化コースをもつ国内大学が開催校となり、ブラジルにおける日本研究の展開や深化を目的として毎年実施されている。
 今年は、USPが開催校となり、同大学日本文化研究所、哲学文学人間科学部東洋文学科日本語日本文学コース、同学大学院日本語日本文学日本文化プログラムの主催により行われた。
 二日間にわたって実施された学会では、浮世絵研究の第一人者早川聞多国際日本文化研究センター教授による「十七世紀初期の京都のパノラマ図(舟木本・洛中洛外図)をめぐって」と「蕪村と春信―雅俗をめぐって―」の講演をはじめ、久野マリ子國學院大學教授による「首都圏方言の提案―東京ではどう話しているか」、久野眞高知大学教授による「若者と方言」の講演ほか、日本語日本言語学研究者及び教員らの研究発表が行われた。
 九五年度に同大学日本文化研究所客員教授を務めていた久野マリ子教授は、同年、USPで開催された学会にも参加していた。当時の思い出を振り返り、「ドナルド・キーン教授(日本文学研究者でコロンビア大学名誉教授)と一緒に学会の場に立てたのが人生で最高の幸せです」と語ってくれた。なお、同教授は現在、サンパウロ大学で客員研究員を務めている。
 また今年は、「サンパウロ大学大学院日本語日本文学日本文化プログラム」が創設十周年を迎えた。三十一日に行われた記念セッションには、現在、USPをはじめ、リオデジャネイロ州立大学、ロンドリーナ州立大学、リオ・グランデ・ド・スール州立大学、サンパウロ州立大学、ブラジリア州立大学などで教員を務める五人が代表者として出席、挨拶を述べた。
 十年の期間を通し、同院を卒業した人数は、十九人。
 唯一、日本語・日本文学・日本文化についての研究ができる修士課程を持つサンパウロ大学大学院。現在、教授や翻訳業などで成功している人には同大学院卒業生も多い。
 同大学院を卒業した代表者たちは、十年を経過した同院の修士課程の歴史を誇り、中には感動のあまり涙を流す教員の姿もあった。また、代表者たちは口を揃えて「博士課程の増設」を希望した。
 現在リオ・グランデ・ド・スール州立大学でコラボレーターを務める柴門明子教員は、同大学の教育を「日本からの客員教授も図書館も素晴らしい」と述べ、「ぜひ、博士課程を一日も早く作っていただきたい」とセッション修了後話してくれた。

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