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ヴィラ・ロボスの魅力語る=ピアニスト鈴木裕子さん来伯

2006年9月21日付け

 【十六日付け既報】曲が持つ魅力に支えられ――。ブラジルが生んだ世界的作曲家、ヴィラ・ロボスの音楽を日本で広め、ブラジル・クラシックにも造詣が深いピアニスト、鈴木裕子さんが十九日来伯、二十二日のマナウス公演を皮切りに全伯九カ所で公演を行う。国際交流基金東京本部主催、在ブラジル日本大使館、各地日本総領事館共催。敬愛するヴィラ・ロボスの魅力、巡回公演に向けた意気込みを聞いた。
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 「最初の二、三秒で分かります。美しいメロディーと豊かな響き、舞踏のリズムに加え、気張らず、ゆったりした感じ。そして温かかさでしょうか」
 ヴィラ・ロボスの魅力に鈴木さんはそう言葉を重ね、本当に嬉しそうに語る。しかし、日本でその作品の生演奏で聞く機会は少なく、自身が行うコンサートでは、説明などを曲の合間に入れる。「演奏だけだといいんですけど。普及は難しいですね」と笑う。
 最初の出会いは、アメリカ留学時に師事したブラジル人ピアニスト、ルイス・デ・モウラ・カストロ氏を通じてのものだった。
 「目からうろこでした。こんな作曲家がブラジルにいたなんて」。以降、他のブラジル人作曲家にも傾倒、ブラジル・クラシックの造詣を深めてきた。
 「その当時は、楽譜を手に入れるのも大変だった」が、近年、日本の音楽大手出版社がヴィラ・ロボスの全楽譜、他ブラジル作曲家のものも出版され始めている流れを説明、「これから頼もしい」と日本でのブーム到来を期待する。
 二〇〇〇年には、リオでブラジル発見五百年記念リサイタルを開いた。敬愛する作曲家の本場でのコンサート。多くの観客が好意的なメッセージを寄せてくれたという。
 「『日本人がブラジルの作曲家の作品を演奏するなんて嬉しく思う』『自分たちの音楽を見直さないといけない』と言ってくれた。大らかで寛容。これがドイツでベートーベンだったら、どうでしょうか」と冗談を交え、ブラジルの国民性を見る。
 今回、日系人の多いベレンやマナウス、サンパウロなども回ることから、「ヴィラ・ロボスを初めてきく方に何かを感じていただければ。長年ブラジルに住んでいらっしゃる方にとって〃ブラジル再発見〃のようなコンサートになれば幸いです」と鈴木さん。
 「ヴィラ・ロボスもブラジル各地を回り、自分の音楽を形成した。追体験といっては大げさですが、今回の公演がブラジルを深く知り、今後の演奏に活かせれば、と思います」
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 エイトール・ヴィラ・ロボス(1887-1959)
 ブラジルのリオデジャネイロに生まれた近代ブラジルの国民的な音楽家。少年の頃から演奏家として活躍。二十年代パリに移り、著名な音楽家らと交流を深める。帰国後リオ音楽院長に就任。演奏活動とともに、様々なジャンルに於いて二千を越える作品を残した。
 作品の特徴は、ブラジルの民謡や世俗的な唄や舞曲を基にした独創性にあり、「ショーロス」という独自の音楽形式を設定した功績は大きい。
 公演日程、場所など詳しくは国際交流基金サンパウロ文化センター(電話=11・3288・4971)または、国際交流基金のHP、http://www.jpf.go.jpまで。

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