ホーム | 日系社会ニュース | 栄養士再教育に来伯――元 シニア熱血の宮城都志子さん――エレーナさんに核心〃伝授〃

栄養士再教育に来伯――元 シニア熱血の宮城都志子さん――エレーナさんに核心〃伝授〃

2006年10月4日付け

 「最初は愕然としましたよ。『計量する』という習慣がない」と、栄養士の宮城都志子さん。以前に、JICAシニアボランティアとして援護協会傘下の各施設で栄養管理、給食管理についての指導を行った経験を持つ。今年六月に自費で再来伯。四カ月の間、援協で働く栄養士足立ゆかりエレーナさん(28)の再教育、指導を中心に力を注いだ。「凝縮した内容で、いい育成ができたと思う」。満足げに話す宮城さんに話を聞いた。
 沖縄県立病院の栄養士のほか、県栄養士会の副会長、病院栄養士協議会の会長を務めた、その道のプロ。「ボランティアの途中で体調を崩して、任期最後までできなかった分の〃借金〃を返すのと、また力になれればと思って」。
 援協に手伝いを申し出たところ、依頼されたのが「若い栄養士らの再教育」だった。「大学で栄養学を専攻していても、一カ月の献立表も満足に作れない」。
 「日本の栄養士は世界一。手持ち料理の種類が二百ではダメ。四百が普通で、六百あれば良い」という。献立表には料理名、使用する材料、調味料にいたるまで種類と分量を指定。一人分の量を決め、廃棄量を計算する。すべて重さを量りながら調理が進む。
 材料ごとの栄養成分表、栄養化計算の手法、年齢、症状に合わせた素人でも分かる栄養交換表など、日本には栄養管理をするための必需品が揃っている。
 ブラジルの栄養学はまだ「丼勘定」。「例えば、献立表に『肉じゃが』とあってもね、どの野菜を使うのか、どの部分の肉か。調味料は何を使うのか、といった指定がない。調理人(コジニェイロ)の裁量で料理が変わってしまう」。
 サンパウロ大学(USP)の栄養学部を卒業したエレーナさん。四カ月間、宮城さんに付いて各施設を二回ずつ廻り、栄養、給食管理を勉強しなおし、料理のバリエーションを増やした。
 イラスト入り野菜の切り方、献立表のリスト一覧、食材が足りない場合の応用の仕方など、コジニェイロがわかるようにポルトガル語で作成。「二十四時間一緒でした。厳しかったですよ」。
宮城さんは「盛り付け方も料理に対する感覚にも文化の違いを感じた。私は日本でのやり方を教えたけれど、エレーナにはブラジルの日系人用に工夫するよう伝えています」。
「あとはエレーナがやるでしょう。まずはコジニェイロに計量する習慣と日本食を知ってもらうことかな」。技術、知識を広めるために、他の栄養士との勉強会を開くのも一案だと話す。
 「エレーナには、ポルトガル語でブラジルの食材の栄養交換表を作る宿題を出しています」。沖縄に帰ると、さっそく栄養学の本、資料を援協宛てに送るという予定だ。
 「ボランティアで来たときは、日本食を教えるので精一杯だった。今回は本当に、充実したことができたと思う。これからも支援していきたい」と話す宮城さんに、「自分にとっても勉強。これからも続けていきたい」とエレーナさんは意思堅く応えた。

image_print