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JICA日系研修員事業――代替飼料で環境保護=鴻池さん、成果語る

2006年10月18日付け

 現在募集が行われている「JICA日系研修」は日本の大学、企業、地方公共団体などからの要望を受け付ける国民参加型の研修事業。
 ブラジル社会、日系社会に貢献する人材育成を目的に、一カ月から一年にわたり、介護、環境、医学、工学、農業など九十コースの研修を行う。ブラジルからは年間七十人が参加している。
 昨年十月から半年間、鹿児島大学水産学部水族栄養学研究室で「環境保全型養魚飼料の開発」をテーマに研修を行ったのは、鴻池龍朗さん(54、東京)。
 ブラジルでは、海産エビの養殖や州立農務局水産試験場とピラルクー養殖の共同研究などを行い、水産養殖コンサルタントとしても活動してきた。
 「データの取り方や具体的な実験方法など専門的な技術を学ぶことができました」と研修の意義を話す。 「元々雑草であるアルファルファを試しにやってみたら、食いつきもいい。代替飼料にならないか、と考えてきた」。
 蛋白質の強いアルファルファを養殖飼料に添加することで、餌の腐敗が遅れるため、水質汚染の防止、環境保護に繋がるという。
 一般的に、養殖飼料には魚粉が多く使われるが、安価なアルファルファに代替させることにより、飼育コスト削減も期待する。
 「例えば、ティラピアだと六、七割が餌代。原価の安いアルファルファがこれに替われば、楽になる」と生産者からの視点も忘れない。
 鴻池さんによれば、同研究室でも、蛋白質を多量に含む大豆カスや焼酎カスを飼料に添加する研究が進められている。今回の研修では、その含有量がアルファルファと同量(二五%)である焼酎カスのデータを元に、準備、実験、分析とそれぞれ二カ月を費やし、研修を進めた。
 実験には肉食魚であるヒラメを使用。アルファルファを一〇%添加した飼料の消化吸収率はほぼ変わらず、増肉率はむしろ増したという。植物性蛋白は吸収率が悪いとされているが、今回そのようなデータは得られなかった。
 この結果に、今回の指導に当たった教授たちも「本格的に実験する価値のある興味深い内容」と関心を示したという。フィリピンやインドネシアからの研究員も「雑食性のティアラピアならさらに期待できる。自国で研究を進めていきたい」とデータ提供など協力を要請、鴻池さんも快諾している。
 「確信を持てる結果だと思う。これからも協力者とともに研究、実験を進めていきたい。もちろんピラルクーの養殖にも生かせていければ」。穏やかな口調に自信とやる気を覗かせる。
 水族栄養学の講義や学会への参加、鳥取県栽培漁業センターの視察に加え、鴻池さんの希望で魚病診断、水耕養殖など特別研修も受けている。
 「色んな勉強をさせてもらい、もう一度行きたいほど。これから研修を受ける人には積極的に学んでほしい」とエールを送った。
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 JICA日系研修に関する問い合わせはJICA聖支所(電話=11・3251・2655、担当村本、土井)まで。

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