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中南米選手の発掘も=新たな道歩む玉木さん=巨人コーチ補佐に就任=よろこぶ伯関係者

2006年11月1日付け

 プロ野球広島、楽天イーグルスに所属し先月二十六日、来シーズンの戦力外通告を受け引退を表明していたアチバイア市出身の日系人投手、玉木エンリッケ・重雄氏(35)がこのほど、巨人の二軍投手コーチ補佐(育成担当)に就任することが決まった。ブラジル出身の同氏には中南米の選手発掘も期待されている。幼少期から同氏をよく知るブラジル野球界の関係者は「とても嬉しいニュース。彼がブラジル野球ともかかわり合う立場になり、多いに今後の活躍を期待したい」と今回の朗報に喜びの声をあげている。
 「これ以上のことはない。彼ももう三十五歳だけど、今回のことはよく運があった。とても恵まれていると思います」――。ニッケイ新聞の電話取材に対し、父親の重幸さんは第一声でこう喜びの声を寄せた。
 玉木さんは引退を決めてからすぐに重幸さんに電話で報告したという。「せがれは野球だけしか知らない子でしたしね。引退したということでこれからの人生をどうするのかと話したところでした」と重幸さんはその時の話を振り返る。
 現在でも野球をするという重幸さんは玉木さんが小さかったころ、よく二人で練習をしたという。「他の小さい子と違って砂遊びもしないで、とにかく野球ばかり一生懸命にやっていました」。
 この他にも、同氏の広島在籍時代によく広島へ訪れ応援したエピソードも懐かしそうに話してくれた。
 「今の彼があるのは日系社会やアチバイアの人たち、フェデラソンの方々のおかげです。とても感謝しております」。
 玉木さんを幼少期から知るアチバイア文協の辻修平会長も、今回の話を自分の息子のことのように喜ぶ。
 「まさかジャイアンツから声がかかるとは思っていなかった。伝統もありブラジルでの人気も根強いチームだしね。とにかくびっくりしたし、なんというか感激しました」。
 辻さんは、今回玉木さんが中南米の選手発掘の担当になったことが何よりも嬉しいという。育成担当としてこれから巨人の育成枠に所属する若手選手や、外国人選手の育成にあたることになる事にふれて、「今後はブラジルや他の中南米の国から日本の野球界にいく選手も増えていく。彼はポルトガル語に加えてスペイン語もできるし日本語も流暢。きっと南米出身の若手選手たちの大きな力になる。活躍を期待したいですね」とエールを送った。
 「恩人」の一人であるサンパウロ州野球連盟の沢里栄志オリビオ会長も突然の朗報に驚いた様子。
 広島時代に得意のフォークボールを武器に安定した中継ぎ投手として活躍した玉木さんは、特に対巨人戦では「巨人キラー」と言われるほどに成績がよかった。「きっと今回巨人から声がかかったのは、それが一つの理由でしょうね」。
 現役時代から若手育成にも定評があり、広島や楽天からもコーチ就任の依頼がきていたそうだ。しかしその中で一番条件がよかった巨人の依頼を引き受けたという。
 日本のスポーツ紙のデイリースポーツによれば、玉木氏は九年間在籍した広島で得た育成ノウハウを巨人でも発揮する意向とのこと。まずは現在行われているドミニカ・ウインターリーグ視察が初の仕事なる。
 ブラジル野球界と日本の野球界をつなぐ大きな架け橋となってほしいと、玉木さんにかけるブラジル野球の関係者の期待は大きい。

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