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=最前線から
■連載(66)=豊倉麗子=アマンバイ日本人会=パラグアイ人の大切なもの

2006年11月2日(木)

 私がホームステイしている家は肉屋を営んでいる。パラグアイ人は肉をよく食べる。日曜日には親戚が集まってアサードをするし毎日の食事にも肉は欠かせない。私も日本では考えられないほど肉を食べるようになった。
 肉屋だけあって毎日の食卓にふんだんに肉がでる。食べ方も豪快だ。狂牛病で騒いでいる国があることなど気にもとめずに骨の髄までしゃぶって食べる。
 肉のせいか甘いもの好きのせいか、ホームステイ先のママは貫禄充分。六四歳で、ひ孫が四人いる。子供は七人、孫は〃たくさん〃なのだそうだ。そして九三歳のママのお母さんも健在だ。
 パラグアイ人は家族が多く、兄弟、いとこ、親戚がいつも集まり、助け合っている。大家族を誇りに思い、また家族以外の人に対しても寛容である。間借り人である私が毎日一緒に食卓を囲むことも当然のように受け入れているし家族や親戚の家でのパーティにも連れていってくれる。
 町の人たちもフレンドリーだ。歩いていると〃Vamos tomar terere?〃と声をかけられる。テレレは肉とならんでパラグアイに欠かせないもので、町のあちこちで家の前に椅子を出し、家族や友人とテレレを飲んでいる姿が見られる。初めは不思議に思ったが、今ではすっかり見慣れた光景だ。 去年、家の壁を塗り直すことになり、連日作業員が家に来ていたことがあった。パラグアイ人は朝が早く、七時前から作業が始まる。ところが、八時に私が仕事に行く時には円陣になってテレレを飲んでいる。
 昼前に私が帰宅するときもテレレをしている。午後再び出勤する時もテレレである。塗り直しは無事に終ったが、家全体を塗るのに一カ月ほどかかった。
 私はテレレの時間を減らせばもっと早く終るのでは?と思ったものである。もしくは私だったらテレレをしないかわりにもっと遅く来るか、早く帰るかしたいと思う。
 けれど作業員たちにそんな発想はないようだ。暑い時に作業をするのには、冷たいテレレを飲みながらのほうが効率的なのかもしれない。
 薬草入りのテレレは、肉の多いパラグアイの食生活で、健康にも役立っている。また、家族や友人との絆も深めている。貧富の差はパラグアイの抱える問題だけれども、心の豊かさはみなが持っているようだ。私もここで大切にすべきものを学ばせてもらっている。
   ◎   ◎    
【職種】日本語教師
【出身地】神奈川県川崎市
【年齢】33歳
Copyright 2005Nikkey Shimbun (Jornal do Nikkey)
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