ホーム | コラム | 樹海 | ◇コラム 樹海

◇コラム 樹海

 先の小欄でギャラップについて触れたが、大統領選結果は世論調査とほぼ同じ数字であり、いささかならず驚いた。ル―ラ支持60%、アウキミンは40%。20ポイントの差までピタリなのである。労働者党の腐敗や謀略は想像を超えルーラ陣営にとっては悪条件が重なったけれども、やはり貧者救済が有権者の心を掴み一票に繋がったと見たい▼政治には高邁な哲学と理想が必要だが、貧しい1200万世帯に月額95レアルの効果は大きい。経済の成長率が低いや―高い金利など政府に対する批判はある。だが、今晩のご飯について心配せざるをえない家庭には、そうした難しい議論よりも、政府が毎月、毎月支給してくれる救済資金はありがたい。この貧困対策と福祉政策がル―ラ再選のカギだったし、貧しい人々の熱意が勝利に結びついた▼旋盤工から政治家に転じたル―ラはカリスマ性が強い。その一方では「同士の皆さん」と語りかける演説は昔と少しも変らない。この庶民性が人気の源泉なのだろう。尤も、世界一高い金利は経済成長を妨げ輸出産業に打撃を与える。そこへドル安と重なっての被害も大きい。しかし―この政策でインフレが抑えられた功績も見逃せないのではないか▼労組出身だけに過激さはあるが「穏健左派」で庶民派。新政権では成長率を高めると発表し金利も緩和の方向へと進む。そして社会資本への予算を増やすと―かなり思い切った舵取りをするらしい。外交も容易ではない。南米には左翼政権が続出し反米の旗手・チャベス大統領を制しながらル―ラ外交をどう生かせるかが問われるときでもあり難しい。(遯)

2006/11/04

image_print