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「好きな人が上手になる」=全伯日本語スピーチコンテスト=非日系が上位占める=15人が多彩なテーマで=自学自習でペラペラに

2006年11月28日付け

 国際交流基金サンパウロ日本文化センター(西田和正所長)は、「第十二回全伯スピーチコンテスト」を二十五日に同センター一階で開催した。全伯八地区で行われた予選を勝ち抜いた十五人が出場。うち九人を非日系人が占めた。参加者は、約五十人の来場者が見守る中、緊張しながらも堂々と、日本語でそれぞれのスピーチを発表した。優勝したのはサルバドールから出場したクレーベル・レアル・サントスさん。同コンテストはここ数年来、上位を非日系が占める傾向が強まっており、今後、さらに拍車がかかることも予想される。
 「自分の言葉を使って、表現する人が増えてきたと思います」と、同センターの専任講師主任で、コンテスト審査員を務めた吉川真由美さんは、大会を評価する。
 同コンテストはこれまで、訪日経験や日本語能力で三つのカテゴリーに分けて行われていたが、今年からカテゴリー制をやめ全員が同一に競うことにした。
 この日出場したのは、レシフェ(東北伯)、ベレン、マナウス、リオデジャネイロ、ブラジリア、サンパウロ、ロンドリーナ(パラナ)、ポルトアレグレ(南伯)の八地区での予選で優秀な成績を収めた十五人。
 「日本語能力の高さではなくて、自分の持っている能力の中で、どう表現して、聴取者に伝えようとするか」。「本や一般的な知識を集めたものでなく、個々人の体験から生まれてきたスピーチを」と、内容が本人のもので興味深いかどうかも、審査の重要基準だ。
 「優れた内容を十分に表現し、聴く者を感動させるスピーチ」が求められた同大会では、出場者の日本語能力の高さだけでなく、表現力の豊かさに、来場者は驚いていた。
 大学受験を九回失敗した経験の「浪人の物語」、太鼓で生活が変わったと話した「和太鼓」、ブラジル内でのインディオ語とドイツ語を例にした「消え行く言語」など、内容は個人の経験、社会問題、夢についてなど多彩なもの。
 吉川さんは「以前は、歴史や移民、日系人についてのテーマが多かったけれど、最近は個人の話が増えました」と分析する。
 出場者は、緊張した面持ちながら、囲碁盤を取り出したり話に歌を加えたりと、観客を沸かす演出を工夫。ユーモアを交えた内容には、会場から何度も笑いが起こっていた。
 四年ほど前に審査員との質疑応答を取り入れたこともあり、原稿の丸暗記は減少したという。参加者らは、スピーチ後の質問にも流暢な日本語で答えていた。
 来年日本語検定二級を受験したいと話すジュリア・カルバーリョさんは「緊張した」と安堵の表情を浮かべた。かすりの着物を着て出場したグスタボ・ビエイラさんは「『過去から学ぶことが大切』と話したので、過去という意味で着物を着てきました」と、服装にも工夫をこらしていた。
 今大会で、見事一位に輝いたのは、自分の失恋経験を話した、クレーベル・レアル・サントスさん。三年間大学の公開講座に通ったのみで、それ以後は自学自習で日本語を身につけた。「中島みゆきの歌が好きで、耳でコピーして辞書を引いたよ。映画もよく見てます」と、きれいな発音で話す。「覚えるためには、日本語を義務のように感じること。自分を日本人だと思って、日本人みたいに考えるのがいいと思うよ」。
 また、十五人中、九人が非日系を占めた現状について、吉川さんは「『本当に好きな人が一番上手になる』という研究があります。自分がやりたくて日本語を勉強している人、日本語でやりたいという気持ちの強い子が前にでてくるのでしょう」。
 〇一年の大会では、入賞者の大半が日系だったため、「非日系人にも入賞の機会を与えよう」とジェスチャーやパフォーマンスを審査基準に加え始めた。翌〇二年、出場者の半数を非日系が占めるようになり、以来、入賞者の多くを非日系人が占めるようになってきた。
 地方で日本語学習のための環境が悪いにもかかわらず、日本語レベルが高いことについて「今はインターネットがあって、やりたい人は映画も歌も手に入れられます。日本語を好きだと思っている子が一番伸びるんですよ」と解説を加えた。
 入賞者は以下のとおり(敬称略)。一位=クレーベル・レアル・サントス、二位=ミエ・弓場(大使杯も受賞)、三位=クラウジオ・アウベス・デ・オリベイラ、特別賞/きれいな日本語賞=グスタボ・エンリケ・ビエイラ・メイレレス、感動スピーチ賞=ナジア・サツキ・ササキ、表現技術賞=ヴァヂソン・ノゲイラ・メロ。

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