ホーム | 日系社会ニュース | 脚光浴びるステビア=パ国、始まった技術指導――貧困削減の起爆剤となるか

脚光浴びるステビア=パ国、始まった技術指導――貧困削減の起爆剤となるか

2006年12月2日付け

 アスンシオンで第二回「国際ステビア・シンポジウム」が、去る十一月九日~十日開催され、ステビアがパラグァイ原産の作物であることが確認された。ブラジルや日本からも専門家や加工業界関係者らが出席したが、特に多かったのは欧州勢だった。この中にはパ国駐在の複数の大使も含まれおり、ステビアに対する欧州諸国の関心の高さが注目された。
 ステビアは甘味料の素材としてだけでなく、医薬品や有機肥料の原料ともなりうるため、欧州からの需要が急速に増加する可能性を示唆したシンポジウムとなった。
 ブラジルのマリンガから出席した加工業者は「原料のほとんどをパラグァイから輸入している」と言明したように、ブラジルからの需要増加も期待できる。日本では中国産ステビアが主流といわれているが、パ国産ステビア参入、増加の将来性も否定できない。甘さが砂糖の二百倍から三百倍なのに、カロリーが殆どゼロ、というのがステビアの魅力だ。
 去る十一月十四日から十七日まで、東京で開催されたパラグァイ・ウルグァイ・ボリビア三ヵ国物産展では、パ国政府は担当大臣と代表団を派遣してステビアの宣伝に力を注いだ。さらに、農牧省はステビア栽培面積を現在の推定千二百~千四百へクタールから二〇一〇年までに、一挙に約十倍の一万二千ヘクタールに増やす計画を発表した。
 大豆、稲、トウモロコシなどの作物と違い、ステビアは機械化栽培の工夫が進んでおらず、播種から収穫まで手作業に頼らざるを得ないのが現実だ。ここに、原産国でありながら、ステビア栽培面積がなかなか伸びない一因がある。
 この現実を貧困削減の有効手段にできるはずだ、と逆転発想を持った日系人のグループが首都から九十キロほど離れているカラガラウ町に誕生した。Comite de Ka´a He´e de Caraguatayだ(Ka´a He´eはグァラニー語によるステビアの表記)。
 この活動を支援しようと、農牧省が同省の農事試験場にグループの五名を招いて、十一月二十日から一週間、ステビア栽培の技術指導を行った。受講者は代表の久岡寛さん(高知県)、木村高義さん(長崎県)、零細農民代表二名、それに、自主参加のJICA青年協力隊員の長瀬晶くん(神奈川県)。東京農大卒の長瀬くんはカラガタウで野菜栽培活動に取り組んでいる。
 試験場長で、パラグァイにおけるステビアの第一人者として、国際的にも知られているハビエル・カサシア農業技師(Ing Agr Javier Casaccia)が率先して指導を行い、育苗と病理担当の若手技師二名が補佐し、密度の濃い研修となった。研修を終えて、修了証が各人に手渡された。研修費用を農牧省が負担するほどの熱の入れようだった。
 木村さん「よい勉強になった。もともと野菜作りなので、十分に理解できた」。長瀬くん「致命的な害虫がいないことを知った。収穫する時に葉が落ちないように注意することだ。ステビア栽培にぜひ挑戦したい」。病理担当のテレサ・アジャラ技師(女性)は「皆さんの熱意がすごかった。協力できて満足」と笑顔で応えていた。
 カラガタウにおける試みがステビア栽培を通して零細農民の多くの生活向上につながることを期待したい。日系コロニアによる社会貢献でもある。

image_print