ホーム | 日系社会ニュース | 「逃げ得では真の共生ない」=帰伯逃亡デカセギ問題=遺族が外務省に署名提出=計68万人が運動に賛同=「被害者の負担最小に」

「逃げ得では真の共生ない」=帰伯逃亡デカセギ問題=遺族が外務省に署名提出=計68万人が運動に賛同=「被害者の負担最小に」

2006年12月6日付け

 【既報関連】日伯間の犯罪者引渡し条約締結と代理処罰を求める署名活動の第三弾の約三十四万人分が、十一月二十七日に外務省の浅野勝人副大臣に提出された。被害者遺族が地元選出の国会議員二人と外務省を訪れ、署名を渡すと共に一日も早い解決を訴えた。以前の分を合計すると約六十八万人分もの署名が集まったことになる。〇五年末までに八十六人のブラジル人容疑者が日本から国外逃亡中であり、ブラジルのイメージを悪くする案件として、両国で早急な取り組みが求められている。
 山岡宏明さんと理恵さん夫妻=静岡県湖西市=ら遺族は外務副大臣に対し、「代理処罰での被害者の負担を最小限にしてほしい」と訴えた。
 特に渡航費用の問題、来伯期間中の滞在費、裁判を傍聴する際の通訳などいろいろな費用が予想される。来伯期間中に関しては、在聖の日系団体による被害者遺族への支援も必要になってくるだろう。
 さらに、遺族は「引き続き、条約締結の交渉をしてほしい。現時点では、条約締結しても引渡しは不可能でも、将来的にはなにか策があるかもしれない、出来るかもしれない」と重ねて要望した。
 三回目の提出となる今回、片山さつき衆議院議員(自民)と榛葉賀津也参議院議員(民主)も同行した。七月に県連の日本祭で静岡県人会が集めた約四千人分も含まれている。
 二歳の娘を交通事故で失った山岡理恵さんは、ニッケイ新聞の取材に対し、「同じ子供を持つ親ですから、罪の意識は今もあると信じています。逃げて暮らすより、とにかく心からの謝罪を理子の遺影の前でしてください」と逃亡中の藤本パトリシア容疑者に訴えかけた。「私たちは、まず加害者から真の謝罪がほしい」。
 さらに、「そして逃げ得が解消されなければ、真の共生などありえないと思っております」と語った。
 山岡さんの母親が折った千羽鶴が渡され、外務省南米カリブ課の部屋に飾ることになったという。
 この件に関し、伯日比較法学会(渡部和夫理事長)が九月に、代理処罰を迅速にするための司法共助協定法案を北脇保之浜松市長に手渡した。同二十四日には同市で国際司法セミナーが開かれ、専門家による公開討論も行われた。主催した浜松ブラジル協会の石川エツオ会長は、「この法案を詰め、今年中に両国政府に提案したい」との展望を本紙に語った。
 外務省も水面下でブラジル政府との交渉を始めているが、落合さんの件が〇七年に時効を迎える関係で、遺族は交渉プロセスを早めるように強く要望している。

指名手配される日系人

 昨年来、続々と日本から指名手配される日系人がでている。
 〇五年十一月、静岡県浜松市龍禅寺町のレストラン経営者の三上要さん(当時57)が他殺体で見つかった事件で静岡県警は、直後に帰伯していたブラジル人アルヴァレンガ・ウンベルト・ジョゼ・ハジメ容疑者(34)を、強盗殺人の容疑で国際刑事警察機構(ICPO)を通して国際手配した。現在、ミナス州で生活しているとの報道も。一家の大黒柱を殺害された三上利江子さん=浜松市在住=は、子供を抱えて経済的な困窮を訴えている。
 同県湖西市で〇五十月、自動車で衝突事故を起し、山岡夫妻の女児、理子ちゃん(当時2)を死亡させたとされる藤本パトリシア容疑者(31)は、事故後一週間ほどで帰伯。業務上過失致死容疑で指名手配された。同容疑者の自宅はサンパウロ市ブタンタン区。
 一九九九年に浜松市内でおきたひき逃げ事件で、同県警はブラジル人ヒガキ・ミルトン・ノボル容疑者(28=当時)を指名手配している。この事故で、落合敏雄さん=浜松市在住=は女子高生(当時16)の娘を失った。帰伯後、結婚して子供もおり、現在もサンパウロ市在住との日本の報道もある。

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