ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

2006年12月8日付け

 ブラジルで普通に和牛が食べられる「市場」をつくろう、と十四年もこだわってきた人たちがいる。ブラガンサ・パウリスタに本部があるブラジル和牛生産者協会の会員たちだ。現在、会員は三十人(社)。会長の飯崎貞雄さんは、十四年間、友人、知人たちから「どうして、ブラジルでそこまでやるの?」と言われ続けてきた。ブラジルでは、十分に牛肉が供給されているのに、ということだろう▼日本の所管官庁や生産者の団体は、外国に和牛の〃タネ〃が拡散?されることを嫌う。和牛という伝統的な知的財産を守れ、というわけだ。そんな状況下で、ヤクルト商工などは米国経由で導入し、愚直なまでに日本の本物の和牛に近い牛の生産をめざしてきたのである▼近年は、受精卵の導入も可能だ。ブラジルの雌牛を〃借り腹〃にする形になるので、一〇〇%日本と同じものが生産できる。しかし、それでは面白くない。精液を入れた場合は、最初の交配で生まれた牛は五〇%和牛、その雌牛にさらに一〇〇%和牛の精液を交配すれば七五%に純度が高まる、と計算上ではいえる。実際は、こんなにうまくはいかないだろう▼ともあれ、協会の会員たちは「ブラジル産和牛」にこだわってきた。その辺が日本人らしい。飯崎さんは、これまで二十系統の和牛のタネを入れて来たという。松阪も神戸も米沢もあっただろう。いま「WAGYU」というポ語がようやく関係者の間で知られ、料理店でも食べられるようになった。努力の結晶である。(神)

image_print