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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年9月30日付け

 日本航空(JAL)の成田―サンパウロ直行便ラストフライトとなった27日夜、グアルーリョス空港で最後の乗客になった人に話を聞いた。ほとんどが毎回JALを利用しているだけあって、撤退を残念がっていた。年配の人も多く「乗り換えになると荷物が大変だねえ…」と漏らす人も▼32年の歴史とコロニアの感情を配慮し、異例のイベントも催された。「ご愛顧ありがとうー」の横断幕が掲げられ、登場前には、米州支社長があいさつ、記念カードも配られた。雨のなか、離陸する機体に手を振る現地スタッフのなかには、涙を流す人も。聞けば、今回約70人が解雇だとか。JAL全体で1万6千人を整理しているから当然ともいえるが、現実的な悲しみの涙でもあったろう。真夜中。雨。取材の帰り、何とも沈んだ気分となった▼そんななか、日系ブラジル人3世がアラブ首長国連邦のエミレーツ航空に就職を決めたというニュースを中日新聞で見た。「自分の生い立ちをチャンスに」と話すのは、エスティマ・マユミさん(22)。4歳で訪日し、小学校卒業後に帰国。3年後に再度日本に戻ったが、当然学校にはついていけない。ブラジル人学校に通いながら、日本語一級を取得、大学に進学した▼面接ではどのような環境でも適応できることを強調したという。「不利なことはあるけど、両方を知っているのは強み」とエスティマさん。スチュワーデスとなるのが夢だとか。ドバイ経由で日本とサンパウロを繋ぐ機内で彼女の笑顔が見られるかも知れない。世界に冠たるJALの機内サービスを名残惜しみながら、そんなことを思った。(剛)

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