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百周年を前に日本館を整備=文協に草の根文化無償=展示・照明整備に7万5千ドル=慰霊碑までの敷地整備も

2006年12月14日付け

 日本政府による「草の根文化無償資金協力」がこのほど、ブラジル日本文化福祉協会(上原幸啓会長)の「日本館日本美術品展示ケース・照明機材整備計画」に対し実施されることになり、十二日、サンパウロ総領事館会議室で署名式が行われた。供与額は七万五千八百五十三ドル。日本館をめぐっては現在、近接する開拓先没者慰霊碑との間の敷地を日系団体で整備する構想も進められている。
 同計画は、イビラプエラ公園内日本館の入口、展示ケースなどを整備するもの。展示館入口のガラス扉を強化ガラスで補強、幅を拡大するほか、より近距離から美術品を鑑賞できるようにするための移動式展示台、美術品を展示するためのガラスケースなどを設置。また、各強化ガラスに合った照明器具や、展示物をより効果的に鑑賞するため、展示ケースと両側面の壁の間に移動式の衝立なども整備する計画だ。
 贈与契約署名式には、総領事館から西林万寿夫総領事、上原幸啓文協会長のほか、丸橋次郎首席領事、文協の関根隆範副会長、栗原猛会長補佐、大田レオ進日本館運営委員長など関係者が臨席。総領事と上原会長が署名した。
 昨年の八月、着任翌日に日本館へ出向いている西林総領事。署名を終えてから、日本館の照明の暗さについて「当時から何とかせねばと実感していた」と述べ、「今日こうやって署名までこぎつけられてよかった。百周年には間に合う良いタイミング」と笑顔を見せていた。
 日本館は一九五四年のサンパウロ市制四百周年を記念して建設された。日本政府に寄贈された古美術品や、同館を訪れた各都道府県知事、著名人などから寄贈された工芸品計七十点を展示しているが、建築から五十二年が過ぎ、老朽化が進んでいた。
 上原会長は、「日本館は、貴重な美術品を展示する場として一日も早い改善が望まれていた。この(展示設備の改装と照明設置)二件は、まさに干天の慈雨のごとく有り難いです」と謝辞を述べ、一日も早く工事を完了させて人々を魅了していく意気込みを表わした。
 サンパウロ総領事館管内で草の根文化無償が実施されるのは、日伯文化連盟への教育機材供与(二〇〇四年)、イビラプエラ体育館の柔道場整備(〇五年)に続き三度目。
 今回の要請は昨年から出されていた。工事は〇七年中の終了を予定している。
 日本館をめぐっては現在、同館と近接する開拓先没者慰霊碑の間の敷地を整備する計画が、文協、県連、サンパウロ市環境保全局により進められている。
 環境整備の観点から公園内のアスファルト道路を撤去する市の法律に沿ったもので、現在、文協を中心に作成した基本企画をサンパウロ州、市の重要文化財保存審議会に申請中。その回答を待っている状態だ。
 同協会によれば、市の審議会からの回答は年明けに出る見込み。市と州で基本計画が認められれば、その後実際の設計、事業計画に入る予定だという。
 現時点では、今回の資金供与と同敷地の整備構想との関連はないようだ。資金調達などの課題もあり、〇八年までの実現も微妙な情勢だが、総合的な整備事業に発展する可能性もあり、注目されそうだ。

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