ホーム | 日系社会ニュース | 学生寮の立て直しに向け、文協が結束=〃学生寮〃としての意義を保ちたい

学生寮の立て直しに向け、文協が結束=〃学生寮〃としての意義を保ちたい

2006年12月22日付け

 夢を大きく持って、できる限りやってみようじゃないか――ボツカツ日本文化協会(日野光生会長)は、このほど、同会が所有する学生寮の経営改善に向けて動き出した。一九八九年に設立された同寮は、ここ三、四年で入寮者が半減。今年の収支は赤字になってしまうという。「続けていくことは難しい。でも多くの人の知恵を借りて、少しでも立派にやっていきたい」。「閉鎖に」という話も出たが何度も会合を開いた結果、寮の存続を決定。いま一度、会員らの協力を誓った。
 一九七九年?月、ボツカツで日本文化協会が創立したのと同じ年に、ボツカツ市から約?ヘクタールの土地の寄贈を受けた。それから八九年、JICAの支援を得てそこに建設したのが学生寮である。
 「当時いくつか寮を作ってたんだ。このあたりに十六の学生寮ができててね。うちもJICAの支援を順番待ちしてたんだ」と、当時会長を務めていた栗山芳水さん(一世)は話す。募金集めにサンパウロに忙しく通った。完成した寮は、希望者が予約待ちになるほどに、毎年満室の状態だった。
 ところが、ほんの三、四年前から寮の経営状況が変わり始めた。空室が目立つようになり、昨年の入寮者は二十五から三十人。今年は二十三人で、研修生らの呼び込みも空しく、収支は赤字になる見込みだ。
 「うまくやってたと思っていたんだけど」と日野会長(二世、64)はこぼした。UNESP、UNIFAC(ボツカツ教育協会)のほか、法律関係の大学など、近隣に四つの大学施設があるボツカツでは、学生の人数は減るどころか増えているという。
 では、入寮者が減った要因はなんなのか? 「ここ数年で、キッチネット(学生用アパート)が近くにいくつもできた」と日野会長。
 また「最近は学生だけでなく、親の考え方も変わってきた。〃しっかり見てくれるところ〃でなく、〃自由に動けるところ〃に」と坂手実初代会長(二世)は分析する。
 「学生寮はただのアパートではなくて『寮にいることがためになった』と、五年、十年やってそこから立派な人が巣立っていくような、目的を持ったものでなくてはならない」。
 学生寮として、今の若い人たちに共同生活の意義をいかに伝えていくのか。ただ寝泊りするだけでなく、スポーツ、勉強の機会も提供できるような学生寮にするには何が必要なのか。
 同席していた元アルモニア寮長の小笠原勇二さんは「学生から話を聞くこと。理想と情熱を持つこと」。寮としての目標と、寮生の興味を合わせて、経営に結びつけると、アドバイスを送っていた。
 十六あった学生寮のうち、現在も残っているのは、リンスやマリンガなど数施設だけだという。
 「難しい、難しいと言っていたら何もできない。赤字だからやめるのでは目的にそぐわない」と坂手さん。ボツカツでの学生寮立て直しは、子弟教育に熱意を捧げる日本移民の大きな夢とつながっている。
 学生寮は三階建てで二人部屋。食事付きで、守衛が二十四時間いる。駐車場もある。現在、寮生を募集中。連絡先=014・3882・6116(学生寮、商業時間のみ)。014・8111・4379/014・3882・1428(坂手さん)、014・9718・1859/014・3882・1039(井上キヨシさん)。住所=Rua Dr. Ranimiro Lotufu 350 CEO=18607-050 Botucatu-SP

image_print