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■記者の目■=決選投票に一縷の望み=再度、統一の取り組みを

2007年4月19日付け

 「最悪の結果」――。文協の会長選挙のシャッパ提出期限を迎えた十八日午後五時半、文協事務局前に集まった関係者から、そんな声が聞こえた。
 「統一シャッパ」をお題目のように唱えながらも、GAS(Integracao)、しんせいきのかい(Unidade e Evolucao)、小川彰夫(Grupo Uniao)の三派が理事会シャッパを提出、三つ巴の状態となったことからだ。=()内はシャッパ名。
 さらに定款改正により、強い権限を持った評議員会執行部シャッパも二派から出るという文協開闢以来の出来事に、「…コロニアはもうダメだねえ」とのため息も漏れる。
 大同団結を目標にした統一シャッパの夢が画餅に帰した、と肩を落とすのはまだ早い。
 小川氏の参戦により、過半数割れすれば、決選投票に持ち込まれる可能性がでてきたからだ。定款にはないが、再度、統一シャッパを組む可能性を、評議員会長に立候補した渡部和夫氏自身が自分の希望として認めている。
 「会長のなり手がいないのは、その職が重過ぎるのでは」と渡部氏は位置付け、新体制では上原会長を名誉職扱いにし、四副会長による合議制を敷くことにより、より執行力のある体制を提案している。
 このうち一人を「しんせい―」側に委ねることを十七日、調整に臨んだ小山昭朗氏に打診、統一シャッパを呼びかけたのだが、「しんせい―」は「検討に値せず」とし、高木ラウル氏を会長に据えた対抗シャッパ提出に踏み切った。
 両者が相容れない理由は、まさにトップにある。二期四年任期の成果を「ノン」と断じ、上原はずしを前提とする「しんせい―」。
 これに対し、新聞社の代表はあくまで中立に位置すべきで会長にふさわしくない、と主張するGAS。両者の主張が足かせとなり、それほど多く行われなかった交渉は平行線を辿ってきた。
 一度は詰め腹を切らされ、辞意を固めた上原会長の続投は、シャッパの陣容を含め、期待感は薄い。
 しかし、対外的なことを考えれば〃文協の顔〃とすることに、否定的な声は少ない。批判の多くは、運営能力にあるからだ。
 「コロニアにリーダー不在」といわれて久しいが、今回、自然発生的な人材検証が行われ、「否」の結果がでたと見ていい。真のリーダーがいれば、事態収拾を図ったに違いない。
 それを踏まえれば、渡部氏の合議制の提案はある意味、的を射ている。小山氏も〃象徴会長〃の下で実権を発揮することを、かつて一つの方法論として挙げていた。
 冒頭の言葉を繰り返すのであれば、今回GASが当選してしまったときだろう。渡部氏は、「他派から理事を出せば、三派を統合できる」とも言うが、これでは前回の選挙と全く変わりなく、二度と埋らぬ深い溝が出来てしまうことは間違いない。
 これからの十日間、百六人の評議員の取り込み、切り崩しを中心に選挙活動が行われると見られる。しかし、勝ち負けに拘ったものではなく、〃ラストチャンス〃を念頭にいれたうえで活動するべきではないか。
 しかし、決選投票になるとしても、結果が注目されるところだ。もし、「しんせい―」が一位になるとすれば、統一シャッパ作りの上でのパワーバランスが変わり、強硬派もいるとされるGASに柔軟な対応も予想できる。そして、小川氏がシーソーの重りになることは間違いない。
 もう一度シャッパを組み直し、各派を取り込んだものにするのが、最良の方法とはいえまいか。
 理想論かも知れないが、この選挙のあと、コロニアには、百周年を理想の形にするという大仕事が残っているのだから。(剛)

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