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野口英世胸像も盗難の危機?!=カンピーナスの公園=付属銅板盗まれた=「ヒドい世相だ」=福島県人会、対策思案

ニッケイ新聞 2007年11月10日付け

 まさか野口英世像も?! 元コチア産業組合関係先亡者慰霊ミサを目前に控えた今年九月、サンパウロ州コチア市内にある庭園広場から、「下元健吉胸像」と「フェラース理事長胸像」が盗まれた事件はまだ記憶に新しいが、それに加え、創立九十周年を迎えた福島県人会が管理するカンピーナスの「野口英世胸像」からも、同氏の名を彫った青銅製のプラッカと、建立の趣旨を記した銅板が盗難にあっていたことが明らかになった。小島友四郎同県人会会長は、前例があるだけに「そのうち、胸像本体まで盗られてしまうのでは」と危惧し、盗難対策を思案している。
 「野口英世胸像」は、カンピーナス市内の野口英世公園内に設置されている。県人会創立五十周年にあたる一九六七年、県人会と同会カンピーナス支部、同地文協が協力して、もとからあった公園内に胸像を作る計画を立て、県側に製作を依頼したもので、福島県内の野口英世記念館にある同氏の胸像と同じ型から作られており、日本製だ。胸像は高さ約一メートルの青銅製で、一メートル半ほどの台座の上に置かれている。
 今回盗難にあったのは、台座の前方にネジでとめられていた「野口博士胸像」と記された青銅製のプラッカと、側面にあった三十センチ四方の銅板の二つ。ネジは隠しネジでその上をセメントで固めていたが、それが壊されて盗まれた。下方には日本語の銅版もあったが、それは無事だったという。
 盗難に気付いたのは、日本からの高校生研修生とともに、胸像の献花を行った今年の八月。「ビックリしました」と小島会長。「九十周年に知事が来られるからと、急いで修復を手配しました」と振り返る。
 今月三日の知事来伯数日前に、銅板の代わりとなる石板が完成。費用は千レアル強をかけた。プラッカはまだ出来上がっていない。
 この九月にコチアで下元健吉、フェラース両氏の胸像が盗難にあって以来、県人会内では、野口英世の胸像も盗まれてしまうのでは、と疑心がもち上がり、「前例があるんだから、〃誘拐〃されたらどうしようか」と小島会長は顔を引き締める。「(カンピーナス)支部も高齢化、縮小が進んで、公園の整備や管理などを頼むのが難しい。かといって、サンパウロから見回りするとなれば時間も経費もかかる」と実情を訴える。
 知事にも状況を説明し、援助を申し込んだが、実質的な対策案が、見回りを繰り返すことしかないだけに先行きが不安だ。小島会長は「永久に保全に努めたいという覚悟はある」とし、今後の管理のあり方を模索している。

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