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2世による百年史1月刊行=原田弁護士ら11人が執筆=批判的視点や分析盛り込み

ニッケイ新聞 2007年11月28日付け

 原田清弁護士がコーディネートし、十一人の二世陣らが中心となって執筆した独自の日系史解釈と、日系人の活躍ぶりをまとめた六百三十頁の大著『O Nikkey no Brasil』(ポ語、ブラジルの日系人)が出版され、来年一月十五日にその刊行記念パーティが行われることになった。
 写真も五十枚収録。単に歴史的な記述にとどまらず、「日本移民に対して差別的な視点を持っていた戦前のブラジル・エリート層への批判的な視点、日系人のブラジル社会への統合プロセスに関する分析、日系社会の将来展望まで含む」と原田さんは野心的な内容を説明する。
 原田さんは昨年四月から本格的に取りかかり、「この一年間は事務所の仕事をかなり後回しにしました」と自負する。最初にポ語で編纂執筆し、後から日本語、英語にも翻訳するという点でも新機軸といえそうだ。
 執筆したのは原田弁護士を筆頭に、吉岡黎明(憩の園会長)、山中イジドロ(元農務大臣補佐官)、ニシダ・ツギオ・ロッケ(商工業専門家)、ヤマダ・ツネヤス・レナート(医師)、二宮正人(USP法学部教授)、中川郷子・中川デシオ夫妻(デカセギ問題専門家)、林アンドレ(元愛知県人会長)、渡部和夫(元サンパウロ州高等裁判所判事)、大原毅(元在聖総領事館顧問弁護士)、上田雅三(連邦高等裁判事、以上敬称略)であり、「初めての二世中心の百年史」ともいえそうな布陣だ。
 全十五章。最初に南米全体およびブラジル州別の日本移民の概況を説明、第二章では原田さんによる「日系人の統合と発展プロセス」とのテーマで年代ごとの分析や考察が展開され、日系メディアや主な教育機関、日系団体の紹介もする。
 第三章では、「私のオヤジも臣道連盟の一員で、刑務所にしばらく入っていた」という原田さんが「第二次大戦により生まれた圧力」というタイトルで、戦時下のナショナリズム的な動きを考察する。
 第五章では山中さんによる「農業面での日系貢献」、第九章は二宮さんによる「デカセギ現象」考察とCIATEの活動、第十章では中川夫妻による「日本の日系ブラジル人」で、在日子弟や帰伯子弟に焦点をあてる。第十一章は林さんが県人会や県連の役割とその将来について考察。第十三章では大原さんにより日本政府による日系社会支援が概説される。
 最終章では、原田さん自らがインタビューし、植木茂彬元鉱山動力大臣、平野セイジUSP副学長、青木智栄子ブルーツリー社長、赤間アントニオ赤間学園理事長ら十九人の人物像を浮かび上がらせる。

州議会で出版記念会=売上げは百周年協会へ

 来年一月十五日午後七時からサンパウロ州議会ホールで出版記念会が催される。印刷部数は二千部。売価は未定だが百レアル以上になるという。出版記念会で招待状を持ってきた人には半額で販売される。レアル銀行が出版費用を支援しており、すべての著作権、版権は百周年記念協会に帰属し、売上げは同協会に寄付される。

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