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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年2月1日付け

 松島巧さん(イビラプエラ陸上ベテラーノ会)の成績は、世界でもトップクラスである。七十五歳だ。自身のトレーニングの仕方を年齢と体力を勘案して、きっちりと決めているのがすばらしい▼「この年になると、勝敗を分けるのは力ではなく、テクニックだ」と明瞭に分析している。具体的には、フォームのいい選手のビデオをみて、それを取り入れ、毎日曜日の練習で確認するというのだ。それはおそらく「力がより要らないフォーム」なのであろう▼松島さんの得意は投擲三種目(円盤投げ、槍投げ。砲丸投げ)だから、筋力がまったく要らないというわけにはいかない。蓄えられた筋力を理想的なフォームで効率的に使う、それに徹するのだと思われる▼日本の男子ゴルフ界の最近の話題は、十六歳の高校生石川遼さんのプロ転向だった。大変な素質の持ち主のようだ。しかし、ゴルフは素質だけでは勝てない。石川さんの現時点の弱点は、腰の筋力不足だという。プロのツアーは一日で終わらない。腰痛に悩まされていては長丁場は戦えない。今後、何はおいても筋力強化に取り組む。「七十五歳の選手」との違いは明らかである▼スポーツだけでなく、人にはそれぞれに、あるいは年齢に見合った行き方がある。それを知れば、〃百戦〃危うくないのだが、凡人の悲しさ、なかなかそれが見つけられない。陸上競技における松島さんのようには、いかないとしても、せめて自分が得心できる処し方だけは見つけたいものだ。(神)

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