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「貧民窟の日系人増える?!」=デカセギ帰伯者問題は深刻=グルッポ・ニッケイ=島袋さんが警告

ニッケイ新聞 2008年2月13日付け

 「百周年だからって浮かれている場合じゃないと思います」。一九九九年からデカセギ帰伯者に職業を紹介するボランティア活動をしているグルッポ・ニッケイの島袋レダさん(56)は真剣な眼差しで問いかける。「このままでは犯罪に手を染めたり、ファベーラに住む日系人が増えるんじゃないかと心配でしょうがない。もしそうなったら、今まで先人が築き上げてきた日系社会全体のイメージをそこねるでしょ」。同グルッポではデカセギ帰伯者を主なターゲットにして再就職相談を受けている。八年半で一万百四十人の相談を受け、うち六割が日系人。日系人の半分はデカセギ帰りだ。ここで相談を受けた人のうちで、少なくとも千五百人が就職先を見つけている。帰伯したデカセギを巡る現状を聞いた。
 「デカセギのことを日伯交流の架け橋とかいう人がいるけど、この橋はとても脆弱なんです。帰伯者で相談に来る人は劣等感にさいなまれ、自分に誇りが持てなくなっている人が多い。そして家族が崩壊しているケースも事欠かない」と島袋さんは相談現場からの経験を語り、「少なくともデカセギ子弟の教育には両国政府はもっと投資すべき」と勧める。
 ブラジルなら日系人同士はすぐに親戚のような親しみが生まれるが、「日本は職を争う競争者同士の関係になり、心が荒む」。
 帰伯後の心理状態に関しても、「以前、日系人は犯罪から縁遠い存在と思われていたが、デカセギが始まってからは、むしろ家庭が崩壊したり個人の尊厳が失われたりして、いつ犯罪に走ってもおかしくない層が生まれてきている」と警告する。
 島袋さんは、デカセギを間接直接に雇用する日本企業経営者たちに対して、「デカセギたちに感謝しているのだったら、口に出して表現して欲しい。そうでないと彼らには分からないし、尊厳も保てない」と注文をつける。
 ブラジルでの再就職を妨げているものに職歴書の空白がある。日本で働いていた期間の仕事が空白になることから、「日本政府が派遣会社に就労者の職歴証明書を出すように義務付けられないか。日本でどんな仕事をしていたか、証明する書類があれば、再就職は大分違う」と提案する。
 帰伯者は仕事が見つからないまま半年、一年が過ぎ「この間、日本で働いていたら何百万円も貯まったかもしれないのに」とまるで損したような感覚に襲われ更に落ち込むのだという。
 同グルッポで紹介している職の初任給は月五百~千レアル程度。「これでは家族を養えない。多くが大卒者である日系人には満足できない。日本での就労経験者に対して、日本進出企業ももっと目を向けて研修生枠や仕事を回して欲しい」と注文した。
 六十歳以上の一世の再就職も斡旋する。相談受付は平日の午前九時から午後五時まで、サンパウロ市リベルダーデ区の東洋会館(リベルダーデ大通り365番)で行っている。問い合わせは電話(11・3399・3754)まで。

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