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「荒馬座」盛況の南米公演=民衆が生んだ日本の芸能=伯・パ8カ所で好評博す

ニッケイ新聞 2008年3月25日付け

 民族歌舞団「荒馬座」(狩野猛代表)の公演「民族歌舞集~大地の鼓動(ひびき)」が今月、南伯を中心に伯・パラグアイ八カ所で行なわれた。民衆の生活から生まれた日本の民族芸能を今に伝える荒馬座。公演は各地で好評を博し、最終日となる二十三日のサンパウロ公演(百周年協会主催)でも、会場の文協講堂が満員となる人気ぶりを見せた。太鼓や笛、歌と踊りが一体となって躍動する舞台に、観客からおしみない拍手が送られた。
 一昨年のパラグアイ日本人移住七十周年以来、二度目となる荒馬座の南米公演。今回はブラジル日本移民百周年を記念して、同国イグアス移住地、クリチバーノス、サンジョアキン、フロリアノポリス、ジョインビレ、クリチーバ、イビウーナ、サンパウロの八カ所で公演した。
 日本からは狩野代表はじめ十九人の団員、南米公演を仲介した澤崎眞彦東京学芸大学教授などが来伯。イグアス移住地からは、同地「イグアス太鼓工房」代表の澤崎琢磨さんら五人が参加。サンタカタリーナ公演をコーディネートした玉城丈夫さん(サンジョアキン在住)も同行した。
 「首都圏に民族文化の花を咲かせよう」を合言葉に、日本の伝統文化を紹介している荒馬座。農業、漁業など民衆の生活から生まれてきた芸能を太鼓や笛、歌と踊りで表現する舞台は、日頃日本文化に触れる機会の少ない南伯各地でも好評を博した。二十一日のイビウーナ公演でも、聖南西の各地から会場のイビウーナ文協会館を七百人が埋めた。
 二十三日のサンパウロ市公演には約千二百人が来場、文協講堂がほぼ満員となった。
 午後三時、松尾治百周年協会執行委員長の開会あいさつに続き、冬の祭りで演奏される「秩父屋台囃子」で開幕。太鼓と篠笛が一体となった迫力ある演奏が会場を引き込んだ。
 続く日本の獅子舞では、「獅子に頭を噛まれると良い事がある」と団員が紹介。客席に降り来場者の頭を噛んで回る獅子の姿に会場は笑いに包まれた。
 春の田植風景を表した「花田植」、豊作を願う「豊年祭り」に続き、機械化以前の農作業を担った馬への感謝を表して男性が馬に、女性が手綱とりを演じる「荒馬踊り」で、歌とともに華やかさと勇壮さが一体となった舞台を披露。
 その昔船で運ばれた味噌や醤油の樽を楽器に見立てた「樽囃子」では、演奏者の軽快な動きと共に「ポクポク」「ポコポコ」と響く軽やかな樽の音に来場者は聞き入っていた。
 一部の最後、「漁師の心意気」を表す「ぶち合わせ太鼓」は一張の太鼓を三人の打ち手が回りながら交互に叩くもの。舞台では三張計九人が一糸乱れぬチームワークで迫力ある演奏を披露した。
 第二部では、沖縄舞踊、エイサー太鼓や、雨乞いの踊り「傘踊り」のほか、「八丈島太鼓」ではイグアス太鼓工房で製作された三尺太鼓の演奏が披露され、観客は太鼓の大きさ、音の迫力に釘付けになった。
 家内安全、商売繁盛を願って福の神が舞う「春駒舞」に続き、稲穂に見立てた竹竿を頭、肩、腰で持つ秋田の「竿灯」でフィナーレ。二時間半の公演が終わると、観客は総立ちとなって大きな拍手を送った。
 来場者からは、「やはり日本のプロは違う。近年にない公演」(七十代、一世)といった感想のほか、八十代の二世男性からは「僕らは日本のことは分からないから、こういう時期に来て見せてくれるのはありがたいこと」という声もあった。イビウーナ公演に生徒を連れて訪れたコロニア・ピニャール日語校の原たずこ教師は「日本の伝統を感じます。生徒達も太鼓をやっているので参考になれば」と話していた。
 「一演目ごとに、熱い拍手と歓声をいただいた」、団員の中村志真さんは嬉しそうに公演を振り返った。「一世、二世、三世の皆さんがブラジルでがんばっていることを知り、移民の歴史についても勉強になりました。日本に帰っても伝えていきたい」。
 公演の橋渡しをした澤崎琢磨さんは「日本人にはなつかしく感じてもらえ、ブラジル人からも好評でした。日本人が生み出した芸能は、世界に通用するものだと感じました」。
 狩野代表はサンパウロ公演を終え、「年配の方にもたくさん来ていただけた。ここまで来てよかった」と充実した様子。公演を振り返り、「これまでの公演では、昔を思い出したのか涙を流す人もいました。三世、四世の人、非日系のブラジル人も皆熱心に見てくれたことを嬉しく思います」と語った。

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